

とても久しぶりに小説を読む。アイン・ランドの有名な長大小説。小説といっても本書はアメリカの上流層に大きな影響を与えた思想書のようなもの。タッガート大陸横断鉄道という会社の業務取締役副社長であるダグニー・タッガートを主人公としている。ダグニーが鉄道ビジネスを進める上での様々な困難を、各人のビジネスに対する思いとともに展開する。
アメリカのビジネス層に対する影響としては、因習に囚われず自分の信念を信じてビジネスを展開するといった心がけらしい。小説では、社会的責任とか弱者への配慮といった言葉を言いながら、実際は業界や既得権益の保護、談合といったものを繰り返す人たちに対して、あくまで採算の可能性からビジネスを展開しようとするダグニーが対立している。ダグニーは対立者から利益のみを追い求める強欲な人間と評されるが、まったくそんな感じはない。むしろ採算とリスクの評価をまっとうにしてビジネスをやってる普通の人間に見える。
小説の出来としてはどうなのだろう。ジョン・ゴールトというここから先に大きく登場する人物について、唐突に「ジョン・ゴールトって誰?」というセリフが脈略なく挿入されるが、何度も出てくるとうるさいだけだ。また、御曹司のフランシスコ・ダンコニアがメキシコで破滅的な鉱山ビジネスをやっているのも動機が結局、意味不明であまり納得しない。
ダグニーは時代設定当時の女性としては、かなり進歩的だと思うのだが、ヘンリー・リアーデンとの不倫の色恋についてはあまりにも男性に従順なのが気になる。ビジネス上の主体性との対比が大きい。
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