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チャールズ・エリス『敗者のゲーム』


アクティブ投資ではなく、インデックス投資の有効性を説いたとして有名な本。勝つために行ったプレーで結果が決まる勝者のゲームと、敗者がミスを重ねることによって決まる敗者のゲームがある。昔の資産運用は勝者のゲームだったのだが、いまは敗者のゲームになった(p.21-24)。勝ちを狙った過大なリスクテイクは損失につながる。いかに負けないようにするかが、回り回って勝つための方策。

著者は、短期的な天気と長期的な気候の区別(p.50)を用いていて、これは分かりやすい。長期投資を行うときに、一時的なマーケットの上下に振り回されてはならない。日々の市場動向は気候にとっての日々の天気のように、それほど重要ではない。

機関投資家などプロが多く活躍し、また効率的になった市場において、プロでも勝つのは難しい。ときたま運良く運用利益を出しても、それが続くケースはごく少ない。結局はみな平均に回帰する。ならば、高い手数料を取るアクティブファンドより、インデックスファンドのほうが最後には良いことになる。投資において勝ち続けるために最も簡単な方法はインデックスファンドを活用することである(p.60)。ただし、その時に、適切な水準のリスクと、期待できるリターン水準が自分の目的に合致していることが必要だ。

インデックスファンドの推奨と並んで著者が記すのは、長期的で一貫した投資戦略の必要性。将来に渡るどのタイミングでどれだけの資金が必要で、そのためにどれだけが積極的に運用してリスクを取れる金額なのか、あらかじめ考えておく必要がある。すなわち投資の成功の秘訣は二つ。一つは証券会社や投資信託の広告、ファンドの運用成績、市場見通しの類を一切無視すること。二つに投資家自身の最大目標を達成する上で、長期的に最も可能性の高い運用基本方針を策定すること(p.116)。あとは市場の変動にじたばたしないこと。ファンドの過去実績や格付けによって判断することは間違い。それらは結局は平均に回帰する。 運用成績の低いファンドでも、ファンドの計画自体がうまく実施されていれば、運用スタイルがたまたまその時の市場に合わなかっただけである。よって市場動向がその運用スタイルに適した方向に動けば、そのファンドは市場平均以上の収益を上げると予想される(p.122-133)。

慎重に検討された投資政策を選択し、その政策を守り続けることこそ、投資で成功する最良の近道である。そのために、何か複雑な行動を取る必要はない。ただ、マーケットの上昇・下落に振り回されてじたばたしないことである。
市場を上回るという「敗者のゲーム」に勝つことは簡単である。そんなゲームに参加しないことだ。市場の現実を踏まえ、自らの投資目的を達成するため、適切な運用基本方針を策定・堅持するという「勝者のゲーム」に集中することだ。(p.217f)
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坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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