バリュー投資のファンドを運営する著者が、顧客向けレターなどで語ってきた投資哲学をまとめたもの。一般的にかなり評価の高い本なので手に取ってみたのだが、あまり面白くはなかった。著者は「私の狙いは、読者がこれまでに触れたためしのない投資に関するアイデアや思考方法を伝えることにある」(p.7)としているが、あまりそうしたものはなかった。タレブやカーネマンを読み、統計学やバブルの歴史を学び、自分が投資で失敗したケースについて考えていればつかめそうな話だ。その意味では、自分もバリュー投資が中心なので考え方の正しさを確認することができた。長期的に見れば、バリュー投資こそ投資収益が得られる可能性の信頼性がもっとも高い(p.63)のだ。
市場のコンセンサスではなく、それが過大評価していたり無視していたりする情報を取り上げて、二次思考にもとづいて考えること。ある情報があったとして、それは皆が知っているのか、誰が知らないのかを考えること(p.32, 161)。統計的に考えて、上がったものは下がる。市場にはサイクルがあり、栄枯衰退は避けられない無常の世界である(p.190f)。ロングテールは必ず残るから予想外の事態は到来する。リスクが低いという思いこみがリスクの主因だという逆説。それは価格を押し上げ、投資家をリスクの高い行動に駆り立てる(p.93-97)。
だから優れた投資家とは相応のリスクよりも低いリスクを取ってリターンを得る、リスクコントロールができる人間だが、こんな投資家は通常は目立たない(p.107f, 112f)。それでも良い時期には平均的リターン、悪い時に市場を上回るリターンをあげるのが著者の理想とするところである(p.297f)。
バリュー投資とは適正価格から下がったものを買うことであって、トレンドに乗ることではない。市場はどうしても行き過ぎるものであり、その歪みこそ投資のタイミングだ。ただ問題は、市場のコンセンサスに無い適正価格をどうやって割り出すかであり、また市場のトレンドに逆らう心理的プレッシャーにいかに抗していくかだろう。こうした点についてはほぼ書かれていない。聞きたいのはそっちなのだが、それは企業秘密だろう。とはいえ、ただ単に適正価格で買うのだとか、心理的プレッシャーに耐えろとか言われても。
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