ベトナム語の仕組みについて、そのさわりを気軽に書いたもの。文字と発音から始まり、基本的な文の構成、人称代名詞と続いた後、名詞、形容詞、接続詞、前置詞を一通りなぞっている。ベトナム語がどういう言語なのか雰囲気をつかむにはかなり良い本という印象。
最初の発音のところは少し分かりにくい。ベトナム語の現在の文字体系であるクオック・グーでは、様々なダイアクリティカルマークがアルファベットについている。このダイアクリティカルマークは母音のバリエーションを表す発音に関するもの(ăâêơôư)と、六種類の声調を表すもの(記号なし、グレイヴ、アキュート、フック、チルダ、ドット)の二つに分かれる。この二つが混在して次々と紹介されるので、あるダイアクリティカルマークが母音なのか声調なのか飲み込みにくい。また六種類の声調が初学者が一番困難を覚えるところなので、もう少し詳しい説明がそれぞれにあってもよいだろう。
他には、生物・無生物を分類する単語として扱われているものの位置づけがよく分からない。これらを伴わなくても使われている例もある。日本語の助数詞に当たるようなものだろうか。
ベトナム語の特徴として印象に残ったところは、基本的文法については中国語と似通っていること。主語や動詞や前置詞の位置、時制や人称で動詞が変化しないことなど。また、[z]の発音をする子音が意外な綴りをする(dとr、たまにg)。zそのものはベトナム語では外来語にしか登場しない。さらに、主語の位置にくるものが実際には主語の機能を果たさず、話題の限定として働く機能を持つ。つまり日本語で有名な「象は鼻が長い」というタイプの文がベトナム語にもある(p.118f)。
スポンサーサイト
- https://exphenomenologist.blog.fc2.com/tb.php/616-f0297ec8
トラックバック
コメントの投稿