読んだ本をひたすら列挙。読書のペース配分とその後の読み直しのためのメモ。学而不思則罔、思而不学則殆。
経済学徒は誰もが読んでいる、ミクロ経済学の入門書。これは確かに素晴らしい、というか凄まじい一冊だ。母国語でこんなレベルの教科書が読める日本の経済学は、この上なく恵まれた状況だろう。読みやすさ、分かりやすさ、内容の網羅性、レベルの高さにおいて、この水準の教科書はほぼ他に見ない。
内容は均衡分析とゲーム理論に分かれている。消費と生産の理論から部分均衡、一般均衡という市場で均衡が成立するメカニズム。市場が失敗するケースとして、外部性と公共財。独占についてはやや記述は少なめ。ゲーム理論は同時手番と時間発展するゲームの基本的な事項を押さえる。行為が不可視である場合のモラル・ハザード、情報が不可視である場合の逆淘汰。最後には社会思想の話がある。ここには、市場が拡大して総余剰が増えていけば、長期的に誰もが得をするという、一見すると元も子もない補償原理の提示する議論の深さが指摘される。
500ページ以上ある本だが、思ったよりもずっと早いペースで読める。そのため、理解したつもりになってしまうおそれもある。姉妹編の問題集で自分で考えるか、何度か再読する必要があろう。
Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。
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