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豊田秀樹編『たのしいベイズモデリング』

日常的でとても身近な話題から、心理学の実験の話まで、様々なトピックでベイズモデリングを試している一冊。題名通り、けっこう楽しい。様々な事象に対して、それを何をパラメータとして、どんな確率分布を使ってモデリングするのか、技の妙が楽しめる。ベイズ理論の解説は一切ないので、ベイズ統計についての一般的な理解は前提としている。


スポーツクラブに対するファン度合いを、好きな程度の感情温度として0~100点として尋ねる。これを、0点と100点はそれ以上の得点が打ち切られた結果と考え、さらに50点は本当に50点である人と、無関心で50点とする人が一定割合でいると考えて、50過剰打ち切り正規分布を使う(p.25-27)。上限打ち切り正規分布は、カラオケ採点でも使われている(p.93-101)。心理学実験での反応時間は、正規分布に似たピーク形状を持ちつつも、正の方向に裾が長い分布を描く。これはワイブル分布などを使う手もあるが、本書は指数・正規分布を使っている(p.84f, 162f)。これはなかなか使えそう。


また、相対的に決まる値のモデリングにソフトマックスで正規化する。麻雀の半荘が終わった得点は、4人を足してゼロになるもので、そのまま得点と考えるよりはソフトマックスを掛けたほうがよい。そしてその結果のベクトルが、個々人の能力をパラメータとするディリクレ分布から生成されたものとモデリングしている(p.193f)。


こうしたモデリングの妙は名人芸的に見るのは面白いが、自分で思いつくのは経験や助けが必要そうだ。なかには参加人数の違いや異なる試行の統制条件を考慮に入れたモデリング(p.141-145)など、かなり高度そうに思われるものもある。なお、実行環境はRとStanで、データとコードは公開されているようだ。

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坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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