読んだ本をひたすら列挙。読書のペース配分とその後の読み直しのためのメモ。学而不思則罔、思而不学則殆。
行動経済学をヒントにして、ビジネスにおけるマーケティング施策などへどう応用できるかを書いている。60個のトピックに分かれ、一つ2~4ページほどで簡潔にまとめられている。行動経済学と名があるが、むしろ認知心理学的な、人間の情報処理におけるバイアスが多く扱われている。たとえば、顔のように見える模様に強く注意が向けられるというシミュラクラ現象は、明確に認知心理学の話であって行動経済学の話ではない(p.46-48)。
様々な認知バイアスが扱われるが、それらは要因の違いによって8つに分類されている(p.26f)。相手、環境、時間、距離、選択条件、枠組み、気分、過去の意思決定。これは著者自身による整理であって、行動経済学で行われている整理などを参照としたものではないようだ。施策を考えるときにパラパラと見るヒント集のように使えるが、それぞれはかなり簡潔に書かれているので、深く理解するのは難しい。
最後にはナッジが扱われる。ナッジの4つのアプローチとして、デフォルト、仕掛け、ラベリング、インセンティブ(p.28)が挙げられている。ただ、インセンティブを与えるのはナッジとは呼びにくい印象をもつ。企業側の考えではなく、ユーザの利益をきちんと考えることがナッジが成立するポイントとされるが、一人のユーザを考えている限り、やはりナッジはマーケティングの仕掛けのように思えてしまう。ユーザにもっとサービスを使ってもらう仕掛けは、ナッジというよりマーケティング施策だろう。何らかの全体最適の実現へ誘導してこそ、ナッジと思われる。
Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。
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