イスラムについて書かれた論文を集めたもの。日本にいると現代イスラム政治の展開など全然見えないので、とても貴重な本である。日米欧では「イスラム原理主義」としてひとくくりにされる様々な立場の区別は基本。テロ活動を含め活動の手段を選ばない「ムタタッリフーン」。イスラムの原理へと穏健的な宗教政治活動で回帰しようとする「サラフィーユーン」「ウスーリーユーン」。これらが区別される。神の下ではみな平等、神への信仰を堅持する限り個々人が尊重されるという「神の民主主義」と、これを欧米型の民主主義に対置する考えには興味を引かれた。
他にはイスラムに対するトクヴィルの典型的な西欧中心主義が意外に思った。あの時代の知識人としては標準的なものなのだが。いざトクヴィルがそうだと根の深さを感じる。
現代イスラムの政治的付置について、その多様性を俯瞰するには役に立つ一冊。
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