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原啓介『測度・確率・ルベーグ積分』

別の測度論の本を読んでいたのだが、どうにも理解が進まないので一度こちらの本を読んだ。130ページほどの小さめの本で、内容はおそらくかなり分かりやすく書いてある。初歩的なところだけを押さえるために、厳密な照明は省いていたりする。しかし重要な筋道は追えるようになっていて、省略の具合が上手。測度論的確率論を学ぶ第一歩としては最適だろう。必要な基礎知識は解析。


それでもいま一つ理解は及ばなかった。測度空間とルベーグ積分の理論構成はなんとなく分かるものの、それが直感的な確率の概念といま一つつながらず。確率変数を確率空間の標本空間$\Omega$から可測空間$E$への関数として捉え直すあたりの発想が弱い。ルベーグ積分も単関数列の極限で定義するのはいいとして、積分値がどう計算されるのかピンと来ない。収束定理やフビニの定理のあたりはとてもよい記述だし、全般的に類書より見通しの良い書き方になっていて、この本の問題ではない。


測度論を読み出したのは確率論、統計学の興味から。その昔、記述集合論の興味から測度論は読んだことがあって、本書にも触れられているソロヴェイのZF+DC+実集合の可測性の無矛盾性も原論文を読んだが、すっかり忘れて測度の理解がゼロに戻っている。

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坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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