fc2ブログ

Entries

國光宏尚『メタバースとWeb3』

界隈の有名人による気軽な調子の一冊。会話の書き下しのような雰囲気。メタバースもWeb3も、様々な人が様々に言っている状況だが、著者なりに筋の通った見方をしていることがうかがえる。トピックに興味があれば読んでみる価値のある一冊。メタバースもWeb3も、もともとある言葉のリブランディングだと捉えている。新しい領域ではなく、すでにある者の捉え直しという冷静な評価。メタバースはMR、XR、ミラーワールドのリブランディングで、web3は暗号資産、ブロックチェーン、クリプトのリブランディングだと言う。


メタバースは、まだメタバースと呼べるようなものは登場していない。RobloxやFortniteという名は上がるが、これらはいまのところただのオンラインゲームである。本当のメタバース時代は、一日の大半をVRで過ごすような、VRネイティブから始まる。VR酔いはVRを利用する時間が長ければ減る。VRの利用が当たり前になれば、VR空間にいることが苦ではなくなる。次の世代になれば、1日の大半をメタバースで過ごすような、VR ネイティブの世代となるだろう。20年以内にはリアルの世界のGDPをバーチャル世界のGDPが超える。いまの世代ではなく次の世代が主役となることから、教育現場はメタバースにはとても大事。メタバースは、ゲーマーの取り込み、職場や学校(タブレットやPC)の取り込み、ポストスマホ(ARグラス)への展開という三つのステップで展開する。ARグラスはすでに登場しているが、初期のプロダクトローンチから定着まで3年はかかると予想。2022年がローンチならアーリーアダプターが2025年くらい、キャズムを超えるのが2028年とかかと。


Web3はブロックチェーンを中心に書かれる。ブロックチェーンは4世代に分類されている。(1)ビットコインとそのフォロワー、(2)イーサリアムとそのフォロワー、(3)イーサリアム上のDapps、(4)電力消費、ガス代、トランザクションのスピードを巡るイーサリアムとそのライバル(SolanaやPolkadot)。ブロックチェーンはトラストを担う中央的な機関はないが、このことはブロックチェーンがトラストレスであることを意味しない。ブロックチェーンは、仕様や実装、ウォレットサービスへの信頼に基づいて初めて成り立つ。この論点は正しいし、大事。しかし、NFTを所有権の証明として語ってしまうところは相変わらず。


著者は最近はDAOに力を入れているようで、Web3話の半分くらいはDAOについて。Web2は承認欲求で動かされてきたが、Web3を動かすのは自己実現(やりたいこと)だという。Web3はみんなが夢を実現する世界を実現する、というお花畑を描く。実際はアイデアを実現できる方法が変わるだけで、みんなが夢を実現できるわけではなかろう。DAOの本質は意思決定の民主化ではなく、プロジェクトに関わったすべての人に金銭的インセンティブを与えられることだとする。つまりトークンの発行と二次流通こそがDAOの本質であると。これもおおむね、賛成できる見解。


最後にはWeb3の現在のビジネス事例として、バーチャルライブ、NFTを用いたファッションやアート、DeFi(挙げられているのは暗号資産の貸借プラットフォームのCompound)、バーチャル渋谷、スポーツクラブのトークン発行、ビッグテックなど巨大資本による投資が挙げられている。


Web3のテクノロジーが原理的に抱える問題にはあまり触れていない。現在のビジネス事例が基本的にポンジスキームだとか。また、すべてのメンバーに金銭的インセンティブを与えるのがDAOだが、それはリスクも共有させている。株式会社なら株主のみが事業失敗のリスクを金銭的に負うが、DAOは資本家以外にもリスクを分担させる仕組みだ。また、xx to earnのようなNFTの仕組みは、それまでカネにできなかった体験や能力もカネに変えてしまうという点で、新しい資本収奪の仕組みとも言える。また、自己充足的(consummatory)行為を道具的(instrumental)行為に変換し、価値を毀損するものでもある。後者の点は実際にオンラインゲームの愛好家から聞かれることでもある。例えばこの記事は極めてまとまりがよく冷静な分析。Web3についてそろそろこうした冷静な分析も読みたいところだが、いまのところは推進派の熱に浮かれた言説だけが目立つ状況。
スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
https://exphenomenologist.blog.fc2.com/tb.php/1388-0afff82c

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

別館:note

検索フォーム

QRコード

QRコード