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アクセンチュア製造流通本部一般消費財業界グループ『外資系コンサルのリサーチ技法』

良書。コンサルティングファームにおけるリサーチの仕方についてよくまとまっている。本書で扱われているのは、情報を探す5つの技法(Web検索、文献検索、記事検索、公的調査・統計活用、民間調査レポート活用)と情報を作る4つの技法(アンケート調査、ソーシャルリスニング、フィールド調査、インタビュー)について。概要やTips、具体的な調査先が記され、また最後にはそれらを組み合わせた実践的な例が書かれる。なお本書は2015年刊なので、Web上のリソースについては情報が古い部分もある。例えばtopsyは2015年末にサービス停止している(p.102)。


なによりもリサーチプランを事前にしっかり立て、やみくもに調べ始めないことが重要。リサーチプラン、なかでもワークプラン(時間割)をしっかり作成しておくことで、目標とするアウトプットに期間内で到達できる(p.18-22)。情報を探す技法と、作る技法ではもちろんプランのポイントが異なる。情報を探す技法は、いかに効率的に取得して、そこから独自の考察を広げられるかがポイント。一方、情報を作る技法は、データを作る設計が極めて重要で、この設計次第でリサーチ結果は大きく変わる(p.32)。


情報を作る技法のほうは、アンケート設計、インタビュー設計などに類書が多いし、リサーチの機会としてはまず情報を探す技法のほうが用いることが多いだろう。情報を探す技法のほうはあまり類書を見ないので貴重。Web検索や文献調査などの違いを踏まえるべき。Web検索はあくまでもリサーチのとっかかりのための技法であり、時間をかけてやるものではない。ゴールと時間を最初に設定してから取り掛かることが重要。1時間もかけても見つからないなら、Web上にない情報か、探し方が間違っている。テクニックとしては、実践的で役立つ方法が書かれる。知りたいキーワードの組み合わせの代替語を考え、それらの組み合わせを網羅的に検索する。例えば「冷凍食品 市場規模」ならそれぞれの代替語を2つづつ考えたなら、検索する組み合わせは9通り(p.34-36)。一方、文献検索では、まず手に取った文献が「調査ベース」なのか「主張ベース」なのかを見極める。主張ベースの場合、著者の主張のために事実の解釈がゆがめられている危険性がある。推測調や断定調の文章に注意し、その論拠に目を向ける。また数字や図表は信頼せず、複数ソースから多角的に確認する(p.48f)。


Webアンケートについての予備調査を活用することの重要性(p.90f)、グループインタビューを同じグループで少なくとも2回以上インタビュー実施すべきことが目を引く(p.123f)。グループインタビューは1回行っただけでは意見に偏りがあって実態を見誤ることが多くある。


さらに随所で、人脈が無くてもおそれずに著者や発行元に問い合わせてみることが書かれている(p.51, 65, 78, 119)。未公開のデータや集計に当たって除外したものなどの情報がもらえることがある。場面に応じて再読する価値のある一冊。

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坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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