読んだ本をひたすら列挙。読書のペース配分とその後の読み直しのためのメモ。学而不思則罔、思而不学則殆。
とても素晴らしい一冊。トポロジー、特にホモロジー代数について分かりやすく、順を追って理解しやすく書かれた一冊。題名通り、読者に一つ一つ証明や計算を追っていくよう導いている。もちろん数学のできる人はどんな本でもそうするのだろうが、本文で飛ばされていると読む方も飛ばしてしまう人にはとてもよい配慮。
一次元のグラフで話を始め、後で二次元の単体複体へと拡張する。蛇の補題やホモロジー長完全列を山場として、閉曲面の分類定理まで。基本的にはとても読みやすいが、後半はすこし理解に苦しんだところもあった。グラフには辺を取り去って両端の点をつなげるレトラクションという操作が定義されている。二次元単体複体では面の結合があるので、レトラクションは特別な操作としては必要ない。
二次元単体複体で図形の同相を示す例題12.3(p.156f)はよくわからない。分割した面で切り離したり、別の辺と貼り合わせるという操作は同相の定義にはない。細分の逆で2と3を直接結合して向きを逆にすればよいのに、一度、面の細分で別の辺を作り出している意味がわからない。二次元単体複体については、切るとか貼るとかいう操作が出てくるのだが、これがなんの操作であって同相が保持されるのかは、議論として見つけられなかった。第13章で出てくる射影平面の連結和の議論も、切るとか貼るとか直感的な説明になってしまい、とてもわかりにくい。これらは14章で辺の列の操作として定義されて、ようやく少し分かるようになった。それでも15章でも再び辺の張り合わせという定義されていない操作に理解が苦しんだ。おそらく数学的にはきちんと議論できるもので、簡略のため直感的な説明に任せているのだろう。
Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。
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