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シンシア・ウィッタム『読んで学べる ADHDのペアレントトレーニング』

子育てについての本だが、邦題に書いてあるのとは違って特にADHDの子供の育児を対象にしたものではない。そのことは原著者も「日本語版へのまえがき」で書いている。原題を訳せば「泣き言やその他のいざこざに勝つ」。簡単に言うと、躾の方法のための本。そう書くと子供をコントロールするための本のように見えるが、コントロールする趣旨ではない。


核となるポイントは、子供の行動をしてほしい行動、してほしくない行動、許し難い行動の3つに分類すること(p.27-33)。してほしい行動をしていたらとにかく褒める。ポイントは行動が終わってからではなく、やり始めたとき、やっている途中にも褒めること(p.49-52)。難しいタスクは分解し、各ステップごとに褒める(p.61-64)。してほしい行動をスケジュールとして可視化した、よりよい行動のためのチャート(BBC)は有用そうだ。できた行動を数え、できた行動だけに着目すること(p.137-151)。


やや意外かもしれないのが、してほしくない行動に対しては怒ったり批判したりせず、ただ無視すること。無視するとは、顔を背ける、話題を変える、他のことに集中する、無視することを宣言するなど。行動が始まったらすぐに無視し、行動をやめたときにはすぐに褒めること。十分な時間を使い、行動が終わるのを親はただ辛抱して待つ。怒ったり批判することは、その行動で親の注意が引けることを正当化してしまう(p.75-83, 91-107)。ただ、してほしくない行動のうち、こちらの注意を引こうとしている行動は良いが、そうでない行動(例えばテレビを見続けるなど)はこの方法ではうまくいかないように思われる。


子供の行動を制限するのは最終手段とするべき。制限とは、指示・命令すること、ブロークンレコード・テクニック(子供の応答を聞かず、ただ指示を淡々と繰り返す)、警告と罰、タイムアウト(決められた時間、何もせずに椅子に座らせるなど)、家族会議がある。制限をすぐに用いてしまいそうだが、褒めること、無視することを習得しないで行動を制限する方法を使ってはならないとする(p.156-163)。効果的に指示するには、目線を合わせる、言葉ではっきり伝える、お願いや疑問文の形ではなく宣言する、平静な声の調子といったポイントがある(p.165-171)。


アメリカでの子育てに基づくものなので、日本では馴染まなかったり、やや冷淡にすぎると思われるところもあるかもしれない。ただ、したくない行動を注意したり説得したりするのではなくただ無視して行動をやめるのを待つなど、なるほどと思うところはある。

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坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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