

0~6歳までの子供に対するモンテッソーリ教育的な接し方を書いたもの。概念的なところと具体的なところが程よくバランスされている。それなりに高度な内容をかなり噛み砕いて平易に書いている。そのため、論理展開やエビデンスの観点からは怪しいところもある(そもそも学術書ではないのでそれを求めても)。
ポイントは、子供の発達段階に合わせた接し方をすること。子供は能力を伸ばし身につけるかを自分で決める。その時ではないと思っていれば関心を示さない。能力を身につける時期が来れば、自分から手を伸ばし、集中して取り組む(p.28f)。どの能力が伸びる時期(これを敏感期と呼んでいる)なのかを見極めて、集中して取り組む(フロー状態に入る)ことを支援することが重要。6歳までが各能力の発達する敏感期。特に将来の人格や人生の土台になるような発達の敏感期は、3歳までに最も強く現れる。幼児には、生まれながらに備えられた能力を発揮するための適切な時期がある(p.36f)。
知能と言っても様々なものがある。ここではハワード・ガートナーの多重知能理論に基づき、それを著者がアレンジしたものが紹介される。ガートナーの多重知能理論はまず、言語、論理数学、空間、身体運動、音楽、対人、内省、博物の各知能の8つからなる。これをアレンジして、体、言葉、数、絵、自然、感覚、音楽、自分、他人という9つの知能を提唱している(p.55-57)。それぞれ平易な日本語に置き換えたものに、感覚を付け加えている(p.80)。基本的には子供が伸ばしたいと思っている知能を伸ばすのがポイント。しかし激変の時代である現在では、どんな知能が今後必要になるか分からないから、9つの知能をバランスよく伸ばすのも大事という(p.60-62)。
各知能に対して、伸ばすためのポイントが挙げられる。それぞれの子供の成長スピードに合わせて、それを強化するような運動をさせること(p.64f)。自然に触れたり、美術館で本物の芸術に触れること(p.75-81)。様々な年代の人とコミュニケーションをとること(p.90-93)。
そして単に知能を伸ばそうとするのではなく、物事を集中して行うフロー状態を乳幼児期にどれだけ経験できるかが重要とされる(p.98f)。フロー状態に入るためには5つのステップがある(p.100-105)。やりたいことをやる、何度もやる、集中してやる、達成感を味わう、満足する。そのために、おもちゃを同じ場所にいつも置くこと、できる限り見せるように置くこと、むやみに話しかけないこと。
まとめとして、子供の能力を引き出す心得を8つ(p.122-152)。(1)子供の全てを受け入れる。自由な発想を阻害しないこと。(2)保育者も遊び心を持ち、いつも子供と楽しむこと。(3)子供が満足するまでやらせること。(4)子供に選ばせること。(5)子供にはその子なりのペースがあり、やってることを見守り待つ。(6)自然の中の、発見や刺激が多い環境でたくさん遊ぶ。(7)子供が自分で解決できることは自分で解決するまで見守る。(8)間違いを訂正せず、まずはできたことを承認する。
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