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田崎晴明『熱力学』


物理を学ぶ人なら誰もが読んでいる一冊。熱力学について初等的な本や動画を漁っていたのだが、一冊きちんとした本を読んだほうが良さそうなので挑戦した。

等温操作と断熱操作という二つの操作が登場する。等温操作における最大の仕事としてHelmholz自由エネルギーが定義される。Helmholz自由エネルギーと内部エネルギーの差が温度に比例するものとして、エントロピーが定義される。その後は、等温だけでなく等圧でもある過程でHelmholtz自由エネルギーを考えたものとしてGibbs自由エネルギーが導入される。その後は主にGibbs自由エネルギーが議論の中心となり、多成分系、水溶液、濃淡電池が議論される。最後には一見、熱とはまったく違うように見える強磁性体において、磁化を体積に相当するものと見なすと熱力学の枠組みで議論できることを示す。

数学的厳密性にも気を配っていて、普通の本では微分可能性を気にせず微分係数を使って定義しているところを、微分可能性を前提せず定義していたりする。このあたりは、相転移現象の研究者ならではの感覚か。

仕事とは別に熱という形でのエネルギーの出入りがある、というのが熱力学の根本的な発想のようだ。では熱とはそもそも何かはあまりこの本の範疇ではない。熱力学の議論の仕方も様々で、混乱も見られるようだ。演習問題もトライしたがあまり解けておらず、理解度は怪しい。
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坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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