ナショナリズムの起源についての有名な本。まずもって教えられたのは、ナショナリズムが最初に勃興したのが南北アメリカであること。これは本書のポイントの一つ。ナショナリズムが西欧のものだとする西欧中心主義を何度も批判する。また、民衆の間にわき起こってくるナショナリズムに対して、統治機構が統治を容易にするために導入する公定ナショナリズムの概念が面白かった。
ナショナリズムの成立に、印刷技術が深く関わる。一つの言語で分かり合えることが一つの「国民」への創造へ至る。また、教育機関のヒエラルキーや、行政官が赴任する範囲が国を定めるという「巡回の旅」という視点も、なるほどと思わせるものだ。冒頭の方にある、ラテン語の権威が失墜し、行政語としても俗語が採用されていく過程の分析は素晴らしい。
だがかなり読みにくい本だ。各地域の歴史や政治について理解がないと、何のポイントのある話なのか分からないことが多い。「~に対して」「逆に」と対比が行われるが、どういうポイントの対比なのか分からないことが多かった。「~からである」という理由付けも、分かりにくいところに多々出会った。慎重に何度か読み解いていかなければならない本だ。
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