fc2ブログ

Entries

アレキサンダー・エルダー『投資苑』


1993年刊、この分野では基本書籍の一つ。トレーダーかつ精神科医という経歴の著者だそうだ。アマチュアならではの心理的側面と、株価チャートに対する様々なテクニカル指標を500ページほどにわたって細かに解説している。

テクニカル指標については著者オリジナルのものを含め、ほとんど耳にするものを網羅している。ただ昔の指標は株式市場の構造変化によって役に立たなくなっているから、今日のマーケットで使用するには注意が必要だというコメント(p.351)はそのまま本書にも当てはまるだろう。ちなみにこの本は改訂・改訳本が出ている。各指標について、概要のみならずその指標が捉えようとしている群集心理、そしてトレーディングへの活かし方を書いており、まとまりがよい。

こうした指標は全部を理解しても意味がなく、自分が納得し活かせるものを使えばよい。個人的には出来高(p.287-295)に注目した。レンジの矩形からブレイクするかどうかは出来高を見るのがヒント(p.194-197)。また他でも多く言われているが、異なる時間サイクルのチャートで分析することの重要さ。トレンドの有無が不明確なら、より長い時間サイクルで見ること(p.161-163)。特にサポート・レジスタンスは長期のほうが重要。日足より週足(p.145f)。

トレードの成功に重要なのは未来の予測ではなく、ブルとベアのどちらか支配的であるかを見出して、それとともにトレードすることだ(p.373)というのは納得。この観点は随所に出てくる。損を出すアマチュアトレーダーはマーケットの群集心理を無視している(p.16)。自己資金の2%をリスクの目安とすること(p.441)。

心理面については、トレーダーが損するのは無計画や計画から逸脱したときだ(p.11, 116)というのに尽きる。トレードに入った理由、手仕舞いのルールといった事柄を日記に書き、自分のトレーディングを客観視する(p.56-58)。トレーディングで成功するための3つの基本項目は、健全な心理状態、理にかなったトレーディング・システム、よいマネー・マネジメント・プランである(p.41f)。
スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
https://exphenomenologist.blog.fc2.com/tb.php/1150-032a8b67

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

別館:note

検索フォーム

QRコード

QRコード