あまりにも有名な本。19世紀初頭、フランス革命の時代を生きた数学者、ガロアについて。10代のときその後の数学史を変える、ガロア理論を生み出す。熱心な共和主義者で、20歳で決闘で死んだ。あまりにも破天荒で、ドラスティックな生涯。本書はその生涯を、想像力豊かに小説の形で描き出した。様々な文献に基づきつつ不足は創作で補う。小説風の伝記、あるいは伝記風の小説。その筆致の鮮やかさ、ドラマ性には評価が高い。翻訳でももう60年近く読み継がれている。
だが、残念。私にはまったく面白くなかった。数学の話が聞きたいのに、どこまでも革命、革命。これがガロアの話である必要がどこにあろう?単なる熱狂的な共和主義者の物語だ。中学校のときガロアが数学に出会うシーン、数学教師リシャールとの出会いは面白い。だが、ひたすら革命、革命。数学の話などときおり思い出したように出てくるだけだ。
かなりの部分が創作に基づいている。一見、何かを引用しているように見える父への手紙、集会でのアジテーション。これも創作。あれも創作。歴史を求めて読む眼にはずいぶんがっかりさせられる。書かれたものの、何を事実として受け取ればよいのか。これは単なる物語か?歴史フィクションか?
虚構に遊ぶことに用はない。自分が相変わらず小説の読み方をまったく知らないことを痛感した読書だった。
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