

ソフトウェア開発者として働きつつ、不動産投資で財を成して33歳で引退した著者が、生きる上での様々なトピックについて語る。ソフトウェア開発者としてのキャリアの形成から、転職のコツ、独学の方法、生産性の高い仕事の仕方、不動産と株式投資、フィットネス、恋愛まで。極めて多くのトピックに渡り、しかも450ページくらいある。それぞれの人が刺さるポイントを拾えばよい。著者はソフトウェア開発者としてそれなりに成功しているが、引退するほど財を成したのは不動産投資であって、ソフトウェア開発者として稼いだわけではないことは注意(p.319-327)。
ソフトウェア開発者は技術をもち、どこでもやっていけるようなスキルなので、そのキャリアを事業として考えるべき(p.8-11)。たまたまいまはこの会社にいるだけという発想。自分をマーケティングすることが大事。特に著者はブログを進める。自分の宣伝になるし、思わぬつながりを引き寄せるし、コミュニケーションスキルも向上する(p.115f)。また履歴書は自分の宣伝パンフレットなので、プロの履歴書ライターを使えとも(p.94-97)。収入は職責についてくるので、より重い責任を提示されたら、引き受けたほうがよいというアドバイス(p.45)。転職時(昇進時も)の給与交渉のアドバイスは相当に実践的。自分から希望給与額を明かさず、会社がそのポジションに確保している予算枠を聞き出すこと(p.282-287)。これらのキャリア上のアドバイスは、日本では有効でないものもあるが、参考になるだろう。
独学での効果的なテクノロジーの習得に有効な3つのことがある。始め方、テーマの幅、基礎。どうやって始めるべきか、どの程度の幅を持つテーマなのか、要求される基礎は何なのか(p.155)。こうした考えはとても有効で、納得がいく。例えば数学書で「入門introduction」とか「基礎element」とか書いてあるものは、時としてかなり難しい本だったりする。いきなり名著とかに取り組むのではなく、自分の今の水準から何を出発的にすべきかは、慎重に検討してから始めるべきだ。さらに学習には10ステップあるという(p.157)。この中では、どこまで学んだら達成かを具体的に決めておくことや、教えることの重要性が刺さる。
中心的に参考にしたのは仕事の生産性、特にポモドーロテクニックについて。生産性向上策の基本的な考え方は、週全体で2時間以内に終わる小さなタスクの実行計画を作ること(p.203)。時間軸の長い仕事は進捗も見えず、集中して成果を上げるには適さない。ポモドーロでは、25分の作業時間を単位とする。毎日10ポモドーロくらいの仕事ができるが、スケジューリングは9ポモドーロ分にしておく。著者はkanbanflowでタスクを管理している。割り込みを避け、メールは一日に一度だけ集中的に処理する。チャットは気が散る原因なので反応しない。たまにはポモドーロを使わない週も作る(p.204-208)。ポモドーロテクニックは、作業量の見積もりが大事。自分が何に最も多くの時間を費やしているかを把握し、生産性を高めるモチベーションを生む(p.212)。さっそく最近ポモドーロテクニックを使っているが、集中する時間が明確になるし、実際一日のうちで自分が集中して仕事をしている時間が驚くほど少ないことが明らかになった。
最後に、そして何度も強調されるのは、忍耐の大切さ。人生、うまくいかないことは多い(p.412)。著者の勧めは、うまくいくまでは、できたふりをすること。これは嘘をつくことではなく、うまくいかなくても自信を無くして閉じこもってしまうことを防ぐこと。ひとまず行動することこそ大事。難しい状況でも自信を持って取り組む。自分の能力に嘘をつくことではなく、前向きな態度を持つことが重要だ(p.90-93)。
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