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宍戸拓人『あなたの職場に世界の経営学を』

近年の実証的な経営学の成果を踏まえた読み物。著者は組織行動を中心とする研究者ながら、実際に企業の現場で経営学を活かした問題解決も手掛けているとのこと。組織における上下関係や働き方、コミュニケーション、PDACAなど施策の回し方といった話題について、最近の経営学から言えることを平易に書いている。ただし、話題はかなり多岐にわたっているし、章ごとのまとまりもあまり見られず、全体的なメッセージは見えにくい。目...

白川克、榊巻亮『業務改革の教科書』

業務変革を行うプロジェクトの立ち上げフェーズに焦点を当てた一冊。業務変革プロジェクトを推進することで定評のあるコンサルティングファームが書いている。クライアントの実名も出てくる現場感ある生々しい話が多く含まれる。全体的に熱気が伝わってくるような一冊。教科書と大事しているが、教科書っぽい無味乾燥感は少ない。立ち上げ期にフォーカスするのは、変革に失敗するプロジェクトの9割は、立ち上げ期にやるべきことを...

馬田隆明『未来を実装する』

とても良い本。著者名は一人だが、本書はアジア・パシフィック・イニシアティブで2019年から1年半にわたり研究が行われた、「社会実装」プロジェクトの成果物。プロジェクトメンバーには6名、学術界から実業界まで有力なメンバーが並んでいる。本書の問題意識は、日本の社会実装に足りなかったのは、技術のイノベーションではなく、社会の変え方のイノベーションだ(p.40)というもの。技術を開発するイノベーション論を説くのではな...

ジャグモハン・ラジュー、Z・ジョン・チャン『スマート・プライシング』

よくある価格設定の仕方とは違う、様々な価格戦略について書かれている。実験的なものもあれば、サブスクリプションなどいまではすっかりお馴染みの価格戦略もある。ちなみに原著は2010年刊。よく採用される単純な価格戦略3つとその問題が挙げられている(p.11-25)。(1)コストプラス法による価格設定。コストに適切な投資収益を加算した料金しか設定できない。コストを最小化する動機が無くなり、長期的には価格が上昇する。コスト...

羽生田慶介『すべての企業人のためのビジネスと人権入門』

とてもよく書けている良書。ビジネスや企業経営と、人権問題がどうかかわるのかを書いている。人権問題というと法律家やNPO関係の人が書いたり発信したりすることが多い。個人的には、それらには人権はどんなにコストをかけても守られて当たり前という感覚が強い。軽視されるべきでないのは当然としても、どの程度のリスクがあってどうコストをかけていくべきかという、ビジネス的発想からは距離を感じることが多い。本書はもとも...

グレッグ・マクラウド『協同組合企業とコミュニティ』

モンドラゴン協同組合企業体についての本。モンドラゴン協同組合企業体は1956年にスペインのバスク地方のモンドラゴンで設立。2000年には、3万人以上の労働者と60億ドルを超える年間販売高を有する。企業、大学、研究機関、さらに独自の協同組合銀行(労働人民金庫)を組み入れている(p.9-11)。資本主義社会にあって、通常の利益追求企業ではなく、従業員の出資からなる協同組合として運営されている。1996年時点ではモンドラゴン...

牧兼充『イノベーターのためのサイエンスとテクノロジーの経営学』

経営学における因果推論を用いた実証研究について。実際の論文の内容を紹介しながら論じている。経営学の中でもイノベーションを対象としている。イノベーションが社会に及ぼす影響、大学など研究機関や研究者とイノベーションの関係、VCの効果などが分析の対象。経営学における実証研究アプローチはまだ日本ではさほど多くない。日本で一般に知られている経営学は、何らかの成功例や失敗例を取り上げたケーススタディから敷衍した...

SSIR Japan編『これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。』

スタンフォード大学で2003年から発行されている"Stanford Social Innovation Review"から10篇の論文を選んで訳したもの。社会課題を解決しようとする組織(典型的にNPO)は課題へのアプローチや組織運営の点で、通常の営利企業とは異なる。実践的にどうしていけばいいかというアイデアがよくまとまっている。それだけでなく、特に別種の企業組織論として面白い論点が見られる。ここでいうソーシャルイノベーションとは、社会課題に...

井上達彦、鄭雅方『世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑』

とてもよい一冊。中国のIT系スタートアップについて、世代を分けて特徴的な企業を平易に紹介している。同時に、経営学のしっかりした議論をもって、なぜそうした企業が成功したのかを記している。企業紹介と経営学的分析のバランスが取れている。ジャーナリスティックで軽薄になることもなく、学問的で読みにくくなることもない。タイトル通り、焦点はビジネスモデルにある。この本は中国のスタートアップが多数興隆してきた背景と...

ANA総合研究所『航空産業入門』

ビジネスとしての航空産業について、学生や初めて触れる人が読むべき標準的一冊。ビジネスモデルが政府との規制とのかかわりでどう成立してきたのか、航空便のネットワークや他社とのアライアンス、プライシングやマイレージなどの顧客管理やブランド管理など。もっとも面白かったのは政府の規制との絡みでどう発展してきたかのところ。1944年11月に行われた、第二次世界大戦後の国際民間航空のあり方を議論したシカゴ会議。しかし...

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プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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