名著として名高い初等力学の教科書。物理がよく分からなくてずっともやもやするので、一度ここは初等力学まで戻ってみることにした。結果、やはりよく分からなくてもやもやする。この本は記述はしっかりしている。内容も運動方程式を基本としながら、調和振動について微分方程式を解く形でいくつものパターンを解説している。単振り子では$\sin{x} \sim x$の近似を行わずにきちんと解くと第一種完全楕円積分が現れること、そしてそ...
有名本の下巻。とてもよく書けている。本書では前巻を引き継いで、まずマクスウェル方程式の導出を行う。変動電位を組み込むことによりマクスウェル方程式が完成する過程はとてもスムーズ。それ以降は、電磁場の時間変化を扱う。微分方程式の解として電磁波が現れる。ついで導体と絶縁体(誘導体)における電磁場を、古典力学で可能な限り扱っていく。ポインティングベクトルが分かりにくかった。誘導体では分極電位などが導入され...
物理学徒は大学の最初のほうでみんな読んでいる電磁気学の名著。基本的な例題を絡めて、クーロンの法則から始まる。静電場の基本的な法則、ガウスの法則とストークスの法則。積分の形で導入された後、微小領域での議論に移って微分の形で丁寧に書き直す。導体と電流についての議論を挟んで、静磁場の議論へ。静電場と類比的に議論される。静電ポテンシャルと類比的にベクトル・ポテンシャルを定義して上巻は終わる。記述は丁寧だが...
現代物理学の観点から時間について述べたもの。時間をテーマとして、相対論や量子力学を平易に語っている。結論としては、相対論のもとでは時間は相対的であり、絶対的に流れる時間は存在しない。私たちが時間の流れ、物事の不可逆的な推移として見ているものは、ビッグバン以降のエントロピーの増大である。なお最後には、認知神経科学の観点から、時間意識の問題が扱われているのが異色。出発点はもちろんニュートン力学の捉え方...
物理を学ぶ人なら誰もが読んでいる一冊。熱力学について初等的な本や動画を漁っていたのだが、一冊きちんとした本を読んだほうが良さそうなので挑戦した。等温操作と断熱操作という二つの操作が登場する。等温操作における最大の仕事としてHelmholz自由エネルギーが定義される。Helmholz自由エネルギーと内部エネルギーの差が温度に比例するものとして、エントロピーが定義される。その後は、等温だけでなく等圧でもある過程でHelm...
量子コンピュータについて量子計算の一線の研究者が書いた一般向け解説書。この人は、2019年に話題になったグーグルの量子超越の論文を査読した人の一人(p.vi)。数式をまったく使わずに書いている。ただ量子の振る舞いそのものが常識に反するものなので、どうにも分かりにくいところは残る。歴史や現在の発展などは記述が明確だし、研究の現場からの視点もある。ただ肝心の仕組みについては分かりやすいとは言えない。量子力学の歴...
協和発酵などで酒類の研究を行ってきた著者が、ワインについて物理的、化学的アプローチで解説する一冊。赤白ワインが話題の中心だが、酒精強化ワインやその他の醸造酒・蒸留酒についても扱われている。著者によれば、日本人はワインを正しく理解していない。明治の鹿鳴館時代に初めてワインを飲んた上流階級の人々が、フランスのワイン文化を日本的に咀嚼せず、そのまま受容したことが日本のワイン文化の無理解を生んでいる(p.6)...
重力の話というよりは超弦理論についての一般向け解説書。超弦理論がどこまで進んでいるかを丁寧に解説している。超弦理論が相手にするような事象は、私たちの日常的世界のスケールとまったく違う。平易な説明はかなり難しいだろうが、筋道を立てて一歩一歩説明している。特殊相対性理論から始まり、一般相対性理論で重力を導入。量子力学を解説。特殊相対性理論と量子力学が出会うところとして、場の量子論を説明。一般相対性理論...
読者に何とか分かってもらおうという著者の思いが伝わってくる名著。量子コンピュータの面白さと分からなさを知るには、これが一番だと思う。きわめて平易な語り口をしていて、数式も控えめながら、書かれている内容はハード。量子力学の基本的な解説、確率波と重ね合わせから始まる。量子コンピュータのアルゴリズムとして、ドイチュ・ジョサ、グローバー、ショアのアルゴリズムを何とか逃げずに解説する。量子コンピュータを物理...
量子コンピュータについて平易に語ろうとしたもの。『日経バイト』という科学雑誌に連載されていたものだそうだ。たしかに語り口は柔らかだが、量子コンピュータについてはあまり分かった感じがしない。むしろ、その周辺の話題についてはよく書けている。量子コンピュータから話は始まる。だがしばらくは量子力学が生まれる歴史的過程について。磁気によるスペクトル線の分裂であるゼーマン効果(p.38-43)を出発点として、原子の内...