別の測度論の本を読んでいたのだが、どうにも理解が進まないので一度こちらの本を読んだ。130ページほどの小さめの本で、内容はおそらくかなり分かりやすく書いてある。初歩的なところだけを押さえるために、厳密な照明は省いていたりする。しかし重要な筋道は追えるようになっていて、省略の具合が上手。測度論的確率論を学ぶ第一歩としては最適だろう。必要な基礎知識は解析。それでもいま一つ理解は及ばなかった。測度空間とル...
特集では分野別に数学書が推薦されている。特集を目的に読んだ。誰もが納得するような書籍もあり、やや意外に思われるようなものもあり。こうしてきちんと一線の数学者が推薦しているものは役に立つ。しかも基本的に独習するものを想定している。他の記事は通りすがりに読むだけだが、行列の指数関数とか、空き家問題の数学的モデリングは面白く読んだ。...
微分幾何の入門書として名高い一冊。たしかにすっきりとまとまっている。曲線から始まり、曲面に至って第一基本量や第二基本量、曲率の議論。動標構を導入して一般論を展開。さらに微分形式を導入して簡潔に示す。接ベクトル場から共変微分、測地線の議論へ。ここではリーマン計量も扱って、リーマン空間へのつながりをつけている。そして微分幾何の入門では一つの到達点となるガウス・ボネの定理を扱う。改訂版で付された極小曲面...
逆数学についての入門書。逆数学は、数理論理学の手法を用いて、数学の様々な定理がお互いにどのような強さの論理体系において同値になるかを調べる。それによって解析学と代数学や、解析学と数論といった異なる分野の定理が同値であることが示されたり、そのために意外に強い体系が必要であったりすることが分かる。本書は一般向けと書かれているが、論理学に詳しくないとしても数学一般にはそれなりに詳しくないと読めないだろう...
内容は懇切丁寧な微分幾何学の入門書。パンダの不思議なイラストや、おやじギャグが随所に書かれているなど、真面目にふざけている一冊。ガウス・ポネの定理までという入門書としては標準的な内容ながら、微分形式を使わずに済ませている。定理や定義の数学的イメージをうまく説明しており、動標構や、ガウス曲率・平均曲率についてよいイメージを持つことができた。第一基本量・第二基本量をもつ曲面が成立するための可積分条件が...
とても良書。タイトル通り、かなり分かりやすい最適化数学への入門書。ポイントはだいぶ絞られていて、主要な定理も証明なしに出てくる。例えば線形計画の双対原理など。ただ幾何学的な意味づけなどの工夫が大きく、理解を助けている。特に関数最適化における勾配法の説明、ラグランジュ未定乗数法のやっていることの解説(目的関数と制約関数の勾配の直交性)など。さらには同じ問題を何度も違う観点から扱い、ひたすら変形を細か...
とても素晴らしい一冊。トポロジー、特にホモロジー代数について分かりやすく、順を追って理解しやすく書かれた一冊。題名通り、読者に一つ一つ証明や計算を追っていくよう導いている。もちろん数学のできる人はどんな本でもそうするのだろうが、本文で飛ばされていると読む方も飛ばしてしまう人にはとてもよい配慮。一次元のグラフで話を始め、後で二次元の単体複体へと拡張する。蛇の補題やホモロジー長完全列を山場として、閉曲...
常微分方程式のいくつかの解法についてポイントを絞って解説したもの。とても分かりやすい。微分方程式の本は解法に特化したものが多い。基本的にいかにして解くかが書かれている。他の数学の本のように、その解法はどういう場合に適用できるのか、その解法が適用できるとはどういうことなのかについて書かれることはあまりない。ある解法で導かれた関数が微分方程式を満たすかどうかは、実際に微分してみればいい、とすることが多...
理論、実例、コードのバランスが取れたよい一冊。線形最適化とその解法アルゴリズムをメインにして、そこから離散最適化、グラフ最適化(経路最適化)、非線形最適化とさわりを説明していく。簡潔な本でそこまで詳細に踏み込んでいかないが、それぞれの問題の概要を知るには良い本。コードはほぼ数式をなぞるだけだが、なぞるだけで書けるということが分かる。理論的解説はときに天下りにもなるが、概ね私にも読めるようなものだっ...
特集は圏論について。様々な分野における圏論を使った議論の展望が扱われている。トポロジー、数論幾何、論理学、集合論、ガロア理論、プログラム意味論といったすぐ考えられる応用先から、ネットワーク、芸術、哲学といったやや挑戦的なものまで。そういえば量子力学の話はない。エッセイ風のものから、当該分野における圏論の使われ方をきちんと紹介する(そのため背景知識が多く必要とされる)ものまで、レベルは様々。冒頭の丸...