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『数理科学 2020年 07 月号』

特集は「AI時代の数理」。様々な科学の分野において、深層学習を中心に機械学習がどのように使われているかが書かれている。純粋数学、数理工学、データ科学、量子力学、物質科学、生命科学、神経科学、臨床医学がテーマとして登場する。各分野それぞれの知識が必要とされるし、機械学習を積極的に使っていく場面は先端的な話題が多いので、読むのはなかなか大変。冒頭に機械学習の活かし方のパターンでも紹介されていればよかった...

浜田宏『その問題、数理モデルが解決します』

とても面白い一冊。数理社会学を専門とする著者が、身近な様々な例を使って、数理モデルでそれらをどう分析するかを解説している。会話体で書かれていて読みやすい。数式が多く出てくるが、各式の導出がかなり詳しく書かれているためフォローしやすい。数学を使って事象を分析するとはどういうことかがよく分かる。現実的だけど完成しないモデルより、単純で完成したモデルのほうが良い(p.47)というコメント通り、単純なものを徐々...

『数理科学』2019年11月号

特集は「最適化の数理」。各分野における、現在の数理最適化の手法の適用例が見える。時刻表の作成などの公共交通、グラフにおける辺素パスと点素パスの存在問題、トラスなどの構造物の最適設計、X線観測からの結晶構造の解析、固有値計算による非凸最適化、システム制御理論とリーマン多様体上の最適化、金融のオプションにおける最適ポートフォリオ、生物多様性を制約とした育種。前半のトピックは数理最適化の利用例としてそれ...

江崎貴裕『データ分析のための数理モデル入門』

数理モデルという観点から様々な分野を横断するように書かれた、とても意欲的な一冊。数理モデルはあくまでツール。それぞれの適用分野で使われるので、分野を超えるとお互いの数理モデルについてあまり知られていなかったりする。実は同じような問題を解いていたり、別の分野での手法が有効に機能したりといった事態が起こる。似た問題設定で異なる分野の学術体系がつながるのが、数理モデルの面白いところ(p.148)。本書の目的は...

涌井良幸、涌井貞美『道具としてのフーリエ解析』

相変わらずこの著者のものは分かりやすくて助かる。工学的な応用に向かうにあたって最低限必要になる概要レベルでフーリエ解析を扱っている。フーリエ級数、フーリエ変換、ラプラス変換、離散フーリエ変換、高速フーリエ変換を扱った後、フーリエ解析とラプラス解析を用いて微分方程式を解く例。さらに線形応答システムにおいて、インパルス応答関数との畳み込み積分をフーリエ変換やラプラス変換の積で置き換える応用例が扱われる...

藤原彰夫『情報幾何学の基礎』

名著。もっとも基礎的なところから情報幾何学の基本まで展開し、統計物理、古典統計、量子統計の3つの分野での応用を垣間見る。線形代数、解析、多様体あたりの大学一年レベルの知識があればなんとか読み進められる。上付き、下付きの複雑な添字が頻出する割に誤植はほとんどない。数式の展開も丁寧な方で、ときに読者に考えさせるための絶妙な空白もある。まずは説ベクトル、共変微分、接続、曲率と捩率、双対接続といった微分幾...

志賀浩二『現代数学への招待』

多様体について平易な語り口で書いた読み物。最近、多様体や微分幾何に触れているので読んでみた。基本的な概念は分かっているのでさすがにすんなりと読めた。まず位相空間から話を説き起こし、位相多様体の概念を説明する。ついで微分を扱い、位相多様体に微分構造を入れたものとして、多様体(可微分多様性)を導入する。そこからの発展的話題として、接ベクトル空間、バンドル、ファイバーバンドルへ進む。現代数学の流れは抽象...

山田功『工学のための関数解析』

「工学のための」とあるが、関数解析の工学での適用例(信号解析とか)はほんの少ししか出てこない。工学的な応用へのモチベートはほとんどなく、中身は定理と証明が並ぶ純粋な数学書。関数解析のうちでも、工学でよく用いられる部分に話題を限定して、あくまで数学書として書かれたものだ。話題が限定されているので、例えば関数解析の主要トピックの一つである線形作用素のスペクトル理論はこの本ではまったく登場しない。また著...

松本幸夫『多様体の基礎』

誰もが読んでいる名著。多様体の基礎的な部分について懇切丁寧に解説されていく。300ページ強もあるので内容豊富と思いきや、読み終わってみれば扱っているトピックは意外に多くなかった。とはいえ説明が冗長な感じはしないので、丁寧な説明がされているということ。複数の座標の取り方を通じて共通する性質をもつ多様体の導入から始まる。1の分割や接ベクトル空間のあたりは、とても面白く参考になった。最終章の微分形式も丁寧に...

平岡和幸・堀玄『プログラミングのための確率統計』

同じ著者による線形代数の本がよかったのでこちらも読んでみた。こちらはあまりよくない印象。様々な話題があまり統一されずに展開されている。まず確率についてのきちんとした、測度論的な見方を前面に押し出している。データがサンプルされてくる確率分布があって、そこから現時点の世界でたまたま特定の値が観測されたという解釈を確率変数について行っている。複数の世界を俯瞰して確率分布そのものを捉える神の視点と、現時点...

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プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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