父親の育児参加を促す本。漫画付き。父親が育児に参加することによる子供への好影響の話と、母親をサポートすることを主に書いている。あくまで従来のジェンダー役割分担に基づいた記述となっている。著者は精神科医で、最後にはともかく生きていることというメッセージが書かれている。...
北海道大学の科学技術コミュニケーション教育研究機関CoSTEPで行われた実践的活動(p.10f, 123)を扱った一冊。科学技術社会論での議論を踏まえて紹介しつつ、討論劇、参加型展示、サイエンスカフェの三つの試みを紹介している。まずは、そもそも科学技術コミュニケーションが必要になってきた背景について。チャットウェイらによると、イノベーションの歴史には3つのフレームワークがある(p.3f)。(1)国家中心で研究開発に投資するフ...
大学初年度向けの人権論の教科書。人権が問題となる個々の場面に対して、何が問題でどう対処されてきたのかが書かれている。人権とは何かについての概説の後、現代における典型的な人権問題として、ジェンダー(女性)、子供、高齢者、障害者、同和問題、外国人が論じられる。さらに最近の新たな展開として、性的マイノリティ、医療アクセスや医療行為の自己決定権、ハラスメント、経済的格差・貧困が論じられる。最後に、日本およ...
教育格差を引き起こしているのものが何であって、それに私たちはどう対処できるか。アメリカのジャーナリストによる分かりやすい問題提起と、解決に向けたいくつかの試みの紹介。まずもってこれはアメリカの事例であることに注意が必要。また一般的な教育論として読むには、貧困層に対するアプローチについて書かれていることにも注意が必要だろう。例えば未就学期における幼児教育の重要性を明らかにしたペリー・プロジェクトは貧...
子育てについての本だが、邦題に書いてあるのとは違って特にADHDの子供の育児を対象にしたものではない。そのことは原著者も「日本語版へのまえがき」で書いている。原題を訳せば「泣き言やその他のいざこざに勝つ」。簡単に言うと、躾の方法のための本。そう書くと子供をコントロールするための本のように見えるが、コントロールする趣旨ではない。核となるポイントは、子供の行動をしてほしい行動、してほしくない行動、許し難い...
わが子が何でも自分で決めて人生の主人公として生きていくのか、親に何でもしてもらわなければできない、言われたとおりにしか行動できない「指示待ち」の人生を生きていくのか、それが3歳から6歳の3年間の親の見守り方で決まってしまうのです。(p.41)3~6歳向けに家庭でモンテッソーリ教育の要素を取り入れるやり方について。モンテッソーリ教育では子供の発達を24歳までの6歳刻みで、4段階に分ける(p.26-29)。すなわち、乳幼児...
0~6歳までの子供に対するモンテッソーリ教育的な接し方を書いたもの。概念的なところと具体的なところが程よくバランスされている。それなりに高度な内容をかなり噛み砕いて平易に書いている。そのため、論理展開やエビデンスの観点からは怪しいところもある(そもそも学術書ではないのでそれを求めても)。ポイントは、子供の発達段階に合わせた接し方をすること。子供は能力を伸ばし身につけるかを自分で決める。その時ではない...
児童発達学の専門家による平易な一冊。モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育の考え方を用いながら、子供に対する接し方を書く。ときおり教育における科学的実験の話もあり、末尾には参照文献も載る。ただそれらは抑制されており、簡潔にポイントを示しながら進む。想定読者をよく考えている。保護者が子供に接する態度として、無条件の接し方(unconditional parenting)と条件付きの接し方(conditional parenting)が区別され...
自閉スペクトラム、および自閉スペクトラム症について臨床経験の豊富な医師による一般向け書籍。対象読者は自閉スペクトラムの子供の保護者がメインだが、広く関わる人々を相手にしていると思われる。自閉スペクトラムの人は、臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースを最優先する志向をもつ。これらが幼児期から見られる場合に、自閉スペクトラムという。自閉スペクトラムのうち、社会生活に支障をきたしている場...
信頼が置ける明快な一冊。自分をコントロールする力、発達心理学でいう実行機能executive functionについて。これは昨今話題の非認知的スキルのうちの一つ。実行機能が子どもの発達や将来に与える影響、神経科学的な基盤、育て方について書かれている。様々な科学実験の取り扱いや紹介の仕方もフェアであり、信頼が置ける。以前読んだGRITは成功エピソードに溢れた非科学的な駄文だったので、とても爽快感を覚える。OECDは3つの非...