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中野崇『マーケティングリサーチとデータ分析の基本』

細かな統計分析の解説ではなく、より上位レイヤーからリサーチの基本を描いた一冊。はじめに読むには適する一冊だと思う。本書で言うリサーチとは、アンケートやインタビューに限定されるものではなく、ビジネス課題を解決するためのあらゆる情報収集や分析を指す(p.22f)。したがってデスクトップリサーチでのざっくりとした市場や競合調査なども含んでいる。リサーチは7つのステップで行われると説く。優先順位の決定、目的の設定...

酒井隆『図解 アンケート調査と統計解析がわかる本』

非常に詳細でありながらまとまりがよい素晴らしい一冊。各ページ見開きで、左側にポイントの記述、右側にはそれらポイントを図表にしたものが並ぶ。アンケート調査の設計から具体的な設問の作成、調査対象の収集、集計。およそ半分の分量で後半が多変量解析の様々な手法をまとめている。それぞれ図表はチェックリストやフローチャートとして使える。アンケート調査は、PDCAのどの段階で調査を行おうとしているかを考えることが重要...

朝野熙彦編『アンケート調査入門』

マーケティングにおけるアンケート調査について書かれた一冊。マーケティングの研究者のみならず、消費財のメーカで実際にマーケティング・リサーチを担っている人たちが執筆に参加している。そのため、アンケート設計などについてとても実務的な記述が窺える。画一的な製品から、細分化されたニーズに応える商品へと消費者のトレンドが移っているのに合わせて、マーケティングの調査テーマも変化している。この変化は4つにまとめ...

マーク・ジェフリー『データ・ドリブン・マーケティング』

データに基づくマーケティング施策のバイブル。いかにデータに基づいてマーケティング施策を立案し、評価し、改善していくか。重視すべきマーケティング指標は15個あると言い、それぞれについてどんな場面でどう使うのかを事例を多く交えながら記している。その15個は伝統的な指標の10個と、主にインターネット上のマーケティングで用いる5個の指標に分かれる。伝統的なものはブランド認知率、お試し、離反率、顧客満足度、オファ...

牧田幸裕『デジタルマーケティングの教科書』

近い将来、デジタルマーケティングの「デジタル」は不要になる。現在我々がデジタルマーケティングと呼んでいるものは、単なるマーケティングになる。AIを活用した消費者データ分析、オムニチャネルは、当たり前のものになるからだ。(p.152)デジタルマーケティングについての概説書。デジタルマーケティングは従来型のマーケティングを基礎として成り立つものとの主張から、従来型のマーケティングについてもしっかり扱われている...

山梨広一、菅原章編『マッキンゼー プライシング』

マッキンゼーの季刊誌から価格設定についての論考をいくつか収録したもの。東京オフィスの人間による描き下ろしもあるが、たいがいはアメリカ東海岸オフィスの人によるもの。論理的・科学的にアプローチしようとしているが、やや古い本でもあるしどこまで通用するものかは心もとない。まず価格マネジメントの問題点が三つ挙げられる(p.4-7)。価値創造を指向した結果、価格の適切性についての検討が欠けてしまうこと。価格の設定を...

福田晃一『共感マーケティングのすすめ』

とても良い本。インスタグラム上でのインフルエンサーを使ったマーケティングについて、かなり具体的に書かれている。著者はインフルエンサーマーケティングの実行を支援する会社を運営している。キーワードはタイトルにもあるように、共感。SNSを使った新たなマーケティングにとって、売ることはプロセスでしかない。顧客が継続的に買ってくれることすらプロセスの一部。マーケティングのゴールは共感を生み出すこと。共感とは、...

マシュー・ディクソン、ニック・トーマン、リック・デリシ『おもてなし幻想』

原題は"The Effortless Experience"で「努力なしの経験」だが、うまい邦題をつけたものだ。カスタマーサービスは顧客に感動を与えるべし、という話がよく聞かれる。おもてなしの心を持って、期待されている以上のサービスを提供して顧客を感動させること。それが当該のサービスへのロイヤリティの向上につながると。本書は著者が属しているCEBという経営コンサルティングの会社が行った、ウェブサイトか電話でカスタマーサービスと...

クリスチャン・マスビアウ『センスメイキング』

データさえ見れば何でも分かる、これからはSTEM教育こそ大事、などの単純化されたデータ礼賛、自然科学礼賛の向きに対して、ビジネスにおける人文社会科学の必要性を説いた珍しい一冊。私自身も長く哲学を専攻しつつ、現在はデータ分析の世界の末席に身を置いているので、興味を持った。著者も大学で哲学を専攻している。また、哲学や社会学など人文社会科学系の人々を集めたコンサルティングファーム、ReD Associatesを経営してい...

吉田就彦、石井晃、新垣久史『大ヒットの方程式』

統計物理学に着想を得て、ブログの書き込み数を説明するモデルを作ったという内容。詳しくは付録にあるが、ブログの書き込み数は減衰率、広告投入額(GRP)、書き込み数の一次の項と二次の項を使って、微分方程式で書かれる。映画にや地方イベントについての書き込み数がこのモデルでよく推定できる。このモデルのポイントは二次の項。これは著者の解釈によれば、複数の他のブログからの影響関係を表す間接コミュニケーションの項。...

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プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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