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長谷川愛『20XX年の革命家になるには』

刺激的な一冊。スペキュラティヴ・デザインという現代アートの潮流に基づく様々な試みについて書かれている。スペキュラティヴ・デザインそのものを全面的に論じたものというよりは、著者自身の体験や作品を踏まえて、スペキュラティヴ・デザインが体験できるように書かれている。「革命家」とは物騒な感じがするかもしれないが、社会変革家ということだ。本書では、社会を変革する手段と方法をアートやデザインの発想から見出す。...

今谷和徳、井上さつき『フランス音楽史』

460ページにほどに及ぶフランス音楽の通史。9世紀のカロリング・ルネサンスから、1980年頃までを扱っている。特にフランス革命以前の中世、ルネサンス、ロココの時代などはあまり類書がない。本書には譜面は登場せず、楽理的な議論は控えられている。代わりに、フランス社会の動きと関連させる形で記述される方針となっている。音楽を孤立させた形でではなく、社会の動きの中で見ている。とはいえ音楽史を通覧した本なので、それで...

細田晴子『カザルスと国際政治』

カタルーニャのチェリスト、パブ・カザルスについての本。ただ音楽学や伝記の本ではない。平和運動と祖国カタルーニャの独立を訴え続けたカザルスの足跡をたどり、そうした平和運動が国際政治の中でどのように捉えられていったかを扱っている。カザルスの文化国際主義者としての側面を扱った一冊。音楽というよりは、現代史の一側面。まずカザルスが生まれるまでのカタルーニャの歴史をざっと洗っていく。カタルーニャは山と海の文...

外尾悦郎『ガウディの伝言』

サグラダ・ファミリアで彫刻家を務める人によるガウディとサグラダ・ファミリアの紹介本。この類のものでは最も読まれている本だろう。彫刻家ということもあり、記述はエッセイ風でかっちりとはしていない。また自身もカトリックに改宗しているので、どことなく宗教的な雰囲気も漂う。サグラダ・ファミリアについてはやはり詳しく、読んでいて面白い。そこにはガウディが実際に述べていることもあるし、著者が類推していることもあ...

ジャン=ジャック・ブデュ『パブロ・カザルス』

稀代のチェリストであるパブロ・カザルスの生涯を簡潔に書いたもの。カザルスについては、カタルーニャ人としてのこだわりや、演奏技法上の革新も重要な点だが、それらはそこまで強調されてはいない。分量もあり、あくまで簡潔にどういう人かを紹介している。カザルスがキャリアを積んでいくには、母親ピラールの役割がだいぶ大きい。父親カルロスは、将来、金にならないからと音楽の道に進むのを反対する。しかしパブロは意志の強...

ジョアン・プニェット・ミロ、グロリア・ロリビエ=ラオラ『ミロ』

バルセロナで生まれ、パリ、マリョルカ島、モンロッチ(バルセロナから100kmほど離れた田舎町)で製作した芸術家、ジョアン・ミロ(1893-1983)の生涯と作品について。著者の一人はミロの孫にあたる。私は視覚芸術にはからきし弱くて、名画を見てもほとんど何も感じない。写実的な絵は、写真が無い時代に頑張って描いたものくらいにしか思わない。ただミロは数少ない例外で、うまく言語化できないが何かを感じる芸術家の一人だ。ミロ...

星野道夫『Alaska 風のような物語』

アラスカ北極圏についての写真とエッセイ。有名な本のようだ。著者はアラスカのフェアバンクスを拠点としながら、北極圏の地域を撮影し続けていた。カリブー、ムース、グリズリー、ザトウクジラといった動物たち。イヌイットやネイティヴアメリカンなど、いまでも狩猟中心の生活を送るアラスカ先住民たち。とにかく広大で厳しいアラスカの自然と、そこに生きる人々が活写されている。写真は躍動的で楽しく美しい。アラスカの大自然...

小沼純一編『ジョン・ケージ著作選』

いままで邦訳されたジョン・ケージの文章やインタビューから、入手しにくくなったものを集めた一冊。作曲家以外の側面であったキノコ研究についてとか、アメリカにおける実験音楽をかなり分析的に評価しているもの、自身の作品についてのインタビュー、マーク・カニングハムのダンス一団のツアーに付き合って世界公演した時の食べたものをひたすら書いているもの、そして何を書いているのかよく分からない文章が収められている。こ...

ポール・グリフィス『ジョン・ケージの音楽』

ジョン・ケージについて、その音楽理論に焦点を当て、ほぼ時間軸どおりに変転を扱ったもの。音楽理論の細かい話が主とはなるが、そこまで微に入り細に入った記述ではない。また音楽理論の変遷の背景になった事柄も扱われている。現代音楽についての音楽理論という、難解に難解を重ねたような話題だが以外に読みやすい。ジョン・ケージにおいて、その音楽理論の変転は必然的だ。ケージの作曲態度はそもそも、創作行為を個人的な嗜好...

潮博恵『オーケストラは未来をつくる』

とてもうまく書かれた一冊。サンフランシスコ交響楽団と、1995年より音楽監督を務めるマイケル・ティルソン・トーマスについて。単に音楽面だけでなく、オーケストラの経営、地域との関わり、若手の教育、テクノロジーとの融合など多くの側面から描かれている。最後には関係者のインタビューも含んでいる。著者は物書きを専門とする人ではないようだが、その辺のジャーナリストよりずっとまとめ方はうまい。サンフランシスコ交響楽...

Appendix

プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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