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鳥海不二夫・山本龍彦『デジタル空間とどう向き合うか』

情報の摂取も食事とよく似ています。情報摂取には、新たな知見を得て、賢くなるという側面と、エンターテインメント、楽しみのためという側面があります。一方で、 情報摂取には私たちが食事をするときに働かせているような「抑え」は存在せず、毎日好きなものばかり食べている状態に近いでしょう。しかし、食事については私たち自身をアップデートさせてバランスを考えるようになったのと同じように、情報についても私たち自身を...

谷口将紀、宍戸常寿『デジタル・デモクラシーがやってくる!』

デジタルテクノロジーと政治の関係を扱ったもの。とても読みやすくまとまっている。著者たちがそれぞれの識者にインタビューした内容が記されている。会話体で書かれているが、おそらく内容は当初の会話よりもずっと整理されている。そのため会話体なのに話が流れて行ってしまうことなく、適切な整理がなされていてよい。モバイルインターネット、センサーやIoTの普及、AIと機械学習などにより特徴づけられる、第四次産業革命の民...

キャス・サンスティーン『#リパブリック』

異質的な社会は共有される経験から利益を得るが、そのような経験の多くはメディアによって生み出される。このような経験の共有は一種の社会の接着剤となり、共有される問題を解決するための努力を促し、人々がお互いを同胞とみなすように奨励し、ときには真の問題や難局に確実に対処できるように助け、自分はどういう人間なのかを認識するのに役立つ。求めてもいない情報にさらされることには特別な価値があり、個人がその情報から...

松尾陽編『アーキテクチャと法』

人々の行動を規制する方法としてアーキテクチャがレッシグ以来、注目されている。本書は法学者(なぜか憲法学者が多い)や法哲学者が、アーキテクチャと法のかかわりについて寄せた論文から編まれている。総説的なものもあり、細かな論点に及ぶものもあり、記述のレベルは様々。法学からアーキテクチャー研究に寄せられる課題が三つに整理されており、参考になる(p.15-30)。(1)代替性。アーキテクチャーは法を代替するのか。特に法...

宍戸常寿ほか編著『AIと社会と法』

およそ2年間にわたる『論究ジュリスト』誌上での座談会を収録したもの。テクノロジーと法をめぐり、9回の座談会の記録と、全体の振り返りからなる。テーマは、データ流通、スマートコントラクト、医療データ活用、専門家の役割、著作権、労働代替、サイバーセキュリティ、プライバシーとなっている。それぞれの回について、必ずしも法律の専門家ではないその道の専門家を二人招き、もともとの4名と合わせ6名で非常に多面的な議論を...

安藤馨・大屋雄裕『法哲学と法哲学の対話』

二人の法哲学者が、お互いに提題者と批判者を交代しつつ、計6つのテーマについて論争を繰り広げる。各テーマに対して、著者以外の立場として隣接する学問分野の論者もコメントを付して参加する。二人は、安藤が功利主義・物理主義的スタンスを取り、大屋が規約主義・構成主義的スタンスを取っており、各テーマでその違いが際立つ。各テーマは挑発的でスリリングなもの。論争の発端となるように、ラディカルにこの機を捉えて提題さ...

キャス・サンスティーン『選択しないという選択』

人々の選択する場面を設計する選択アーキテクチャにおいて、デフォルトが機能する条件について。デフォルト・ルールはいつでも有効なわけではなく、能動的に選択させたほうが適している場面もある。また、機械学習などによって高度に個別化されたデフォルトが今後有効になっていくことを論じる。私たちの生活は選択にあふれている。しかし選択がなされる社会的状況を省略するのは不可能。何らかの選択アーキテクチャはいつも必要と...

水野祐『法のデザイン』

意欲的な一冊。テクノロジーの進展などにより、法がそれまで想定しなかった状況において、法の規定が問題になることが多く起こる。こうした状況と、どう対処して制度設計していくかについて。著者は音楽やアートなどのクリエイターとの協働、またクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの理事も務める弁護士。第一部が一般論、第二部が各分野における各論となっている。各論では音楽、アート、写真、ゲーム、ファッションなどの先端的...

小向太郎、石井夏生利『概説GDPR』

GDPRことEUの一般データ保護規則についての概説書。GDPRについては入門的な本から逐条解説まで出ているが、この本は日本の個人情報保護法と比較する形で、表やフローチャートを交え、GDPRの特徴を浮かび上がらせている。逐条ではないが内容をテーマごとにまとめて記している。分かりやすい良書。内容はGDPRの概説、規制内容、法執行体制、日本企業の対応について。最後に著者たちの対談が載っている。日本法との対比はとても参考に...

鈴木正朝、高木浩光、山本一郎『ニッポンの個人情報』

個人情報保護法制に関わってきた専門家たちによる鼎談をまとめたもの。2015年刊なのでいまでは古さを感じるが、個人情報保護法やその関連法令が成り立ってくる生の場面が伺える。法制定をめぐる国の委員会などでの、裏表合わせた駆け引きが描かれる。日本の法律がどうやってできてくるかの一場面を活写したものとしても読める。サブタイトルにあるように、個人を特定する情報(典型的に氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの...

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プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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