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山本龍彦編『AIと憲法』

AIの普及がもたらす法的問題について、様々な観点から各論者が論じた、450ページほどに及ぶ重厚な一冊。総じて議論のレベルは高く、この分野における法学者の関心の高さがうかがえる。AIと憲法というタイトルは一見、奇妙な取り合わせに見える。しかし、AIの普及は憲法が前提としている近代法の基礎、特に自由な意思決定を行う自律的個人という考えと衝突する。結局問題になるのは、社会的な承認・選択の主体である我々を構成する...

平野晋『ロボット法』

法学者による、自律型ロボットがもらたす法的問題についての概観。まとまりよく、また分かりやすくしっかり書かれている。法律のみならず、人工知能の倫理的な問題に関心があるなら一読すべき一冊。ロボット法という特定の法律分野があるわけではない。しかし自律型ロボットの発展は早く、それにまつわる問題を考えておかなければ手遅れになる可能性がある。ロボットやAIの最近の発展スピードが速すぎて、これを正しく利活用するた...

福田雅樹、林秀弥、成原慧編『AIがつなげる社会』

総務省情報通信政策研究所の「AIネットワーク社会推進会議」およびその前身にあたる「AIネットワーク化検討会議」での議論に基づき、各著者がAIが社会実装された場合の様々な問題についてそれぞれ論じている。特徴はAIネットワークと称して、AIを搭載したソフトウェアやロボットが単独で動くのではなく、他のAIと協働して動く点を特に考慮に入れていること。また、多少とも未来の論点で具体的なイメージを持ちにくいことに対して、...

ウゴ・パガロ『ロボット法』

ロボットがもたらす法的問題について、法哲学の立場から詳細に検討を行った一冊。ロボットといっても様々なものがある。ロボットの応用は極めて多様であり、規範的課題を検討するうえで一般化をすると失敗する(p.xiv)。本書で検討されるのはドローンや自律型致死兵器システム(LAWS)から、外科手術ロボットであるダヴィンチ、自動運転、金融トレードロボット、NAOやAIBOのようなペットロボットなど。本書ではこれら様々なロボットを...

弥永真生、宍戸常寿編『ロボット・AIと法』

とても面白かった。機械学習による予測の発展と、それを処理プロセスに組み込んだロボットが普及していくにあたって生じる法的問題について、それぞれの著者が論じている。国内・国外の法政策の動向から、近代の法システムが前提とする自由で自律した個人という考えの批判、契約や責任、刑事司法、知的財産権、ロボット兵器といったトピックが扱われている。扱われているトピックは多様。なかには現在すでに問題が生じている契約、...

野口祐子『デジタル時代の著作権』

著作権という制度が、デジタル技術の進化によってどのような影響を受けているか。著作権法が抱えている根本的な問題は、100年以上前に決められた法律の枠組みでありながら、ベルヌ条約などの国際条約により変更せず維持するよう求められていることだ(p.16)。特にベルヌ条約の第27条第3項には、条約の骨子の改正は、加盟国164か国の全員一致でなければ変えられないという規定がある(p.89)。そもそも馬車の時代に作られた法律の枠組...

梅屋真一郎『マイナンバー制度で企業実務はこう変わる』

マイナンバー制度で企業実務はこう変わる(2014/09/25)梅屋 真一郎商品詳細を見る2014年9月刊。マイナンバー制度の導入によって民間企業に及ぶ影響について。新規性のある情報は無かった。内容のまとまりや対応のフローなどが載っている点からして、同著者の『人事・総務のためのマイナンバー制度』を読んだ方がよい。後者の本があることからすると、本書はあまり意味をなさない。...

梅屋真一郎『人事・総務のためのマイナンバー制度』

人事・総務のためのマイナンバー制度 (労政時報選書)(2014/12/17)梅屋 真一郎商品詳細を見るマイナンバーの情報には多く接してきたが、ようやく具体化してきた感じ。この本は2014年10月末の情報を基にしている。民間企業側の一員として制度設計にかかわっている人の書いた本。民間企業の対応として求められるものについて信頼が置ける記述になっている。民間企業といっても、記述の主な対象は金融機関以外の個人番号関係事務実施者...

高下淳子『今までで一番やさしい 法人税申告書のしくみとポイントがわかる本』

今までで一番やさしい 法人税申告書のしくみとポイントがわかる本(2010/01/23)高下 淳子商品詳細を見る法人税申告書の具体的な仕組みやその書き方について解説した本。特に法人税申告書の別表のうち、税務上のP/Lとなる別表四と、B/Sとなる別表五の関連について多くの紙面が割かれている。法人税等の対象となる所得は、会計の経理上において計算されて株主総会の承認を受けた決算数字から、様々な調整を行って確定する。本書では決...

榎並利博『マイナンバー制度と企業の実務対応』

マイナンバー制度と企業の実務対応(2014/06/09)榎並 利博商品詳細を見るタイトルから想像して、マイナンバー制度導入に伴って民間企業が実務対応しなければならないことが詳説されているのかと思うと、期待外れになる。実務対応の要件は確かに書かれているが、それは序章の9つのチェックポイントと、第二章に書かれているのみ。第二章も特定個人情報保護評価についての分量が多い。それ以外は一般的な仕組みの解説、条文解説、今...

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プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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