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山道佳子、鳥居徳敏、木下亮、八嶋由香利『近代都市バルセロナの形成』

19世紀後半のバルセロナについて、都市計画、商業・経済、建築、絵画芸術の側面からテーマ別に論じたもの。基本的に歴史学のアプローチで書かれている。近代から現在につながるバルセロナの形を作ったのは、何と言っても都市計画家サルダー(セルダ)だろう。ただ彼は同時代には評価されておらず、評価が行われたのは1990年代だというのは意外だった。その生涯について詳しく扱われている(p.27-33)。また、そもそも市壁を壊すこと...

竹中克行、齊藤由香『スペインワイン産業の地域資源論』

とても面白い一冊。スペインのワインに対する原産地呼称(Denominación de Origen)を始めとする地理的呼称制度が、スペインのワイン造りをどう変えたかを扱っている。豊富な統計データや、実際に現地を訪れての多くの調査に基づいている。日本でのワイン紹介本はDOを冠してボトルで売られるワインがほとんど。この本では、それ以外にも原酒だけ生産するもの、バルクで販売するもの、テーブルワイン(呼称がつかないもの)として売ら...

田澤耕『カタルーニャを知る事典』

カタルーニャに関する様々な事柄について、トピックごとに簡潔に書いたもの。政治経済、歴史、言語、芸術(建築、絵画、音楽)、文学、スポーツ、食、民俗・芸能、都市バルセロナといったトピックが挙げられている。記述の統一感もあるし、エッセイ的な軽いタッチで読みやすい。興味を惹かれるようなエピソードが多く、手軽で読んでいて楽しい。カタルーニャは昨今、独立に向けた機運がまたしても盛り上がってきている。この本が出...

田澤耕『ガウディ伝』

なかなかの良書。本書はたしかにガウディの生涯を年代順に追っていった記述。特色は、時代背景を詳しく描いていること。そのためガウディ自身の話は本の半分くらいしかない。彼がどういう時代に生き、何に影響を受けて活動したかを描こうとしている。直接的にガウディのことだけを知りたい読者には、持って回ったように思えるだろう。だがこの著者は時代そのものを描き出すのがうまいようだ。ガウディはカタルーニャの当時の第二の...

大滝恭子、永峰好美、山本博『スペイン・ワイン』

スペイン・ワインについての解説書。気候や歴史などの概論の後、スペインの原産地呼称(DO: Denominación de Origen)について一つ一つ解説している。この本に書かれているのは67のDOで、記述の濃淡はあれども、気候、代表的な品種、ワイナリー、醸造家を述べる。スペイン・ワインはここしばらく、安価ながら優秀なものとして日本でも広まっている。この20年くらいの間にスペインワインには革命的ともいえる変化があり、素晴らしい産...

立石博高、奥野良知編『カタルーニャを知るための50章』

いつも読んでいるエリア・スタディーズのシリーズ。50章に分かれて、カタルーニャの自然、スポーツ、音楽、芸術、言語、政治経済、歴史などを扱う。いわゆる通史的なものは最後のセクションにある。カタルーニャの現在をフォーカスしようとしていると見える。著者それぞれでバラバラとして記述が続く。数ページで一つのテーマを扱っているので、記述はコンパクト。そこまで強い印象を残すものは少ない。政治、歴史の項目では、単純...

田澤耕『物語 カタルーニャの歴史』

バルセロナを中心とするカタルーニャ地方の歴史を、人物を中心に描いたもの。この本はカタルーニャに生きる普通の人々への親しみある姿勢があり、なかなか味わい深い。ピレネー山村の日常を描いたまえがきなどにうかがえる。著者は歴史研究者ではなく、銀行に就職してバルセロナに語学研修に派遣された後、バルセロナが気に入ってカタルーニャ文学研究者となった面白い人だ。そうした経歴も普通の歴史書とは違う内容を与える。中心...

岡部明子『バルセロナ』

都市バルセロナについての通史。著者が建築家ということもあり、建築や都市計画の話が多く登場する。バルセロナの発展に絡めながら、その市街拡張やそれに関わった建築家を挙げている。バルセロナは挿絵にもある美しい碁盤の目の都市景観に見られるように、かなり計画的に作られた都市。こうした取り上げ方に適するものだろう。ヨーロッパ都市の多分に漏れず、バルセロナも紀元前20年頃にローマ人が建設した都市バルキノを起源とす...

エドゥアルド・メンドサ『カタルーニャでいま起きていること』

バルセロナ生まれの小説家が、カタルーニャ独立を巡る2017年現在の状況についてエッセイ的に記す。100ページほどで字も大きい小さな本。カタルーニャ独立問題はすっかりこじれている。その展望は暗く、なんの目的のためにどうすればいいか分からないまま、ここまで来てしまったと言う(p.95f)。険しい山々で分断された渓谷からなるカタルーニャは、村々が孤立しているのが一般的。カタルーニャは基本的に閉鎖的社会である。スペイン...

中嶋弓子『ハワイ・さまよえる楽園』

450ページほどに及ぶ本。ハワイの歴史、さらに日系人の経緯、そしてハワイ王国転覆100周年に向けたハワイの民族意識の高まりを扱う。学術的な側面とジャーナリスティックな側面のバランスが取れた記述で、大著だが読みやすい。カメハメハ王朝の成立からハワイ王国の転覆までの過程はよく書けている。特に、イギリスの影響を受けて近代化を進めるハワイと、その後のアメリカへの接近について。ハワイに色濃く残っていたタブー(カプ...

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プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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