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堀井秀之『社会技術論』

社会問題を解決する技法としての社会技術について、その方法論が具体的に書かれた内容豊富な一冊。著者とその指導学生たちによるこれまでの研究成果が、教科書としてまとめられている。問題の分析、解決策の立案、解決策の影響分析という三つのフェーズを中心として書かれている。社会技術という言葉はそこまで有名でないと思うが、社会問題を解決するための広い意味での技術のこと(p.1f)。ここで言う技術とは、工学的な技術だけで...

アマンダ・リトル『サステナブル・フード革命』

食糧生産技術の現在について。ジャーナリストがアメリカ、アジア、ヨーロッパ、アフリカの各地を回り、様々な分野で食糧の問題に取り組んでいる人々を取材している。それには例えば、以下のようなものが含まれる(p.20f)。ケニア初の遺伝子組み換えトウモロコシを育てる畑。 中国で台頭する精密農業のスタートアップ。土も日光も使わずに野菜を栽培する世界最大の垂直農場(日本だと植物工場と呼ばれる)。培養肉を作る研究室や、3D...

SSIR Japan編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 05 コミュニティの声を聞く。』

コミュニティの声を聞くと題して、社会課題の解決にいかに受益者たるコミュニティ側の声を反映させるかについての論考を集める。データに基づくエビデンスはたしかに重要だ。しかし、コミュニティの人々の参画を無視しては社会変革は実現しない。取り上げられている事例で示唆的なのは、2010年にニューアーク市とフェイスブックが進めた教育改革のケース(p.70-80)。この取り組みは、トップダウンで進められ失敗した。施策側と受益...

香取照幸『教養としての社会保障』

日本の社会保障制度の概観と、問題点、提言の書。介護保険制度を作った元厚生官僚が記した一冊とのことで、内容と並んで官僚はどうあるべきかといった議論もある。題名からは、社会保障制度について教養レベルで誰もが知っておくべき内容が書かれているように思われる。しかしそれはだいたい三分の一程度で、残りは社会保障を維持していく上での日本社会の問題点や、提言が長く続く。個人的には物足りなさを感じた。最初のうちは統...

キャス・サンスティーン『スラッジ』

サンスティーンの近著。100ページほどと短め。スラッジとは定義が難しいが、手続きや行為を遅らせる障害のことを指す。きわめて煩雑な書類仕事を求められる申請を必要とするものなど、一応形式上は禁止されていないのだが、実際にそれをやろうとすると様々な障害に会い、結果として禁止するに同様な効果を生む。スラッジは人がやりたいことをやる、行きたいところへ行くのを阻む摩擦、あるいは抵抗でできた魔のぬかるみである。地...

SSIR Japan編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 04』

コレクティブ・インパクトの現在について。ソーシャルイノベーションが大きく話題になってきたのは、コレクティブ・インパクトという考え方の登場が寄与してる。本号は、当初話題になったコレクティブ・インパクトのその後を振り返り、最近の展開やより強調すべき点を論じる。関連して、コレクティブ・インパクトを目指す各所の活動についていくつもの記事が載っている。現在の視点から振り返ると、コレクティブ・インパクトの取り...

エリック・クリネンバーグ『集まる場所が必要だ』

とても興味深い一冊。人々のつながりを作り助け合いを醸成するためには、そもそも人々が集うことのできる場所が必要という主張。社会関係資本が育つかどうかを決めるこうした物理的条件のことを、本書では社会的インフラと呼ぶ。世界各地で社会的インフラを作ろうとしている試みや、適切な社会的インフラで社会課題の明暗が分かれた事例を自然実験として取り上げて論じている。実証的な社会学、社会疫学的な視点が見られるのも好印...

若松征男『科学技術政策に市民の声をどう届けるか』

科学技術政策に一般市民を参加させる方法と、それを実践した経験からの生々しい報告。この分野の第一人者的に実践してきた人による記述なので、非常に具体的。どの点で苦労して、どのくらいの期間やリソースがかかったのか詳細に記されている。市民参加型の手法、参加型テクノロジーアセスメントは、市民参加のレベルと、参加結果の政策に対するインパクトから分類されている。市民参加の程度が低い順から、情報提供、意見聴取、参...

SSIR Japan編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 03 科学技術とインクルージョン』

科学技術の社会実装において、いかにマイノリティーを排除しない、包摂的な実装を行っていくかについて、海外・日本のいくつかの論考を集めている。どれも方法論や例示に豊富でなかなか興味深く、楽しく読んだ。冒頭には、テック業界の雇用における包摂の試みがある。ソフトウェアエンジニアを始めとするIT業界の雇用は高度技能を求めるために、そのような教育が可能な一部のセクターに偏りがち。マイノリティーを積極的に受け入れ...

江崎貴裕『数理モデル思考で紐解く RULE DESIGN』

視野が驚異的に広い一冊。ルールデザイン、ルールメイキングという論点から、実に多くの学問分野を渉猟して、設定したルールがうまく作動する場合、作動しない場合の原因や事例を扱っている。人がルールに従うときという観点から書かれているので、心理学や行動経済学を中心に、経営学、複雑系、政治学、社会学、機械学習と多くの分野に及ぶ。そして具体的な事例がとても豊富に含まれている。その事例も、細かな数字まできちんと追...

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プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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