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葉村真樹編『都市5.0』

本書は一般的な都市に関する書籍群とは異なり、このような「メディア」をはじめとした、あらゆるテクノロジー進化の歴史と、それにともなう人間の生活を取り巻く社会経済的な変化に焦点を当てる。それが都市5.0の時代の「都市」を考えるうえで、極めて重要なバックボーンであるにもかかわらず、多くの「スマートシティ」などの議論において、まったく欠けている点だと考えるからである。(p.17)次世代の都市についての論考や試みを集め...

馬場靖雄『ルーマンの社会理論』

われわれは常に、諸現象の「背景」、「根底」、「起源」を探ろうとする。 これこれの現象が成立している。成立しているからには背後でそれを支える一般的なものが、あるいは何らかの根拠が存在するはずだ、と。一方ルーマンは、そのつど成立している事実的な事態を超えるような何かを、さらにはその事態の「起源」を想定することを、徹底的に拒否する。この態度を、徹底的な内在性の立場として性格づけることもできるかもしれない...

ローマン・クルツナリック『グッド・アンセスター』

私たちがGood Ancestor、すなわち後世の人々から見て良い祖先であったと評価されるためには、いま何をしたらよいかを語った一冊。短期的な利害に引きずられがちな私たちの思考を、いかにして100年単位の長期的な利害を考えるように向けられるか。そして考えた事柄を実行に移すようにできるか。人々を長期思考に向けされるためのアプローチ、長期的利害を検討するためのアプローチ、長期的利害を踏まえた方策を立案し実行するための...

秋津元輝、渡邊拓也編『せめぎ合う親密と公共』

とても興味深い論文集。分野としては人類学や社会学になるだろうか。公共圏と親密圏という分析の枠組みは、ハーバーマス以来よく使われている。他人の生に深い関心を寄せる、家族を典型とする親密圏。古代ギリシャのアゴラを理想とし、自由で自律的な個人が集って社会や国家全体の事柄を議論する公共圏。そしてその間にあるものとしては、地域や企業をはじめとする様々なコミュニティ、共同体が考えられてきた。しかし、現代では共...

ジャック・アタリ『21世紀の歴史』

フランスの賢人ジャック・アタリによる未来展望の書。2006年刊といまとなっては古い。しかしこの後の著作でも基本線は変わっていないようだ。アタリによれば21世紀末に向けては、三段階の波を経ていく。それは超帝国、超紛争、超民主主義と名付けられている。人類が滅亡する寸前まで行く超紛争が2030~2050年と、いまとなってはもうすぐに予想され、その瓦礫のなかから一筋の希望のように超民主主義が立ち上がっていく。未来予測な...

梶谷懐、高口康太『幸福な監視国家・中国』

中国についての議論では「異形」という言葉が常套句で、あたかも日本を含めた他の世界とは別のベクトルを向いているのように語られることが多いのですが、実際には世界の新たな事情に学びつつ、その潮流を中国の状況にあった形で取り入れているというほうが現実に近いように思います。(p.112)中国政府による監視体制について考察した一冊。実際にどのような監視体制が組まれているのかの実例についてと、そのような体制を支えてい...

中村淳彦『女子大生風俗嬢』

学費や生活費を通常のアルバイトの収入では賄いきれず、風俗嬢として働く大学生を中心とした、若者の貧困についてのルポルタージュ。タイトルの女子大生の風俗嬢のみならず、ウリ専や出張ホストを行っている男子大学生の話もある(p.54-69)。また、なぜか40歳になって風俗では稼げなくなってきた人の話も入っている(p.142-153)が、これは本書の筋から外れた話題だろう。交際している男性にどうみても騙されて、風俗嬢をやっている女...

マシュー・ジャクソン『ヒューマン・ネットワーク』

経済学者によるネットワーク構造の読み物。その人の属性ではなく、その人がどのようなネットワークのなかにいるか、どのような人とつながっているかから分かるような様々な事象を、多くの分野で取り上げていく。記述は柔らかく平易。ネットワーク分析の概念が豊富な例とともに導入されていく。だが、必ずしもネットワーク分析への入門として概念を理解する目的ではないよう。ときには記述が長く、様々挙げられる事例にときおりポイ...

ジェリー・ミュラー『測りすぎ』

成功と失敗を測る有効な測定基準を開発するためには、現場についての深い知識が相当必要となる。しかも、汎用的なテンプレートや公式を欲しがる者にとっては腹立たしいことに、その知識はほかの状況ではまったく応用できないかもしれない。難しいのは何を数えればいいか知ることと、そうやって数えた数字が実際には何を意味してるかを知ることだ。(p.135)原題は「指標の暴政Tyranny of metrics」。何らかの指標で測定し数値化して...

クリス・クリアフィールド、アンドラーシュ・ティルシック『巨大システム 失敗の本質』

原子力発電所、プラント、ITシステム、行政機関など巨大で複雑なシステムが破滅的に失敗するケースの分析と、その対処について書かれた一冊。学術的ではなく、具体例に溢れ読みやすい筆致。巨大システムの失敗がなぜ起こるかが第一部、どう対処すべきかが第二部。第一部は整理されておりとても分かりやすい。第二部は羅列が続き、やや整理が足りずポイントが見えにくい印象を持つ。巨大システムが破滅的に失敗した典型例として、ス...

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プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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