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ドナ・ジャクソン・ナカザワ『脳のなかの天使と刺客』

ミクログリアについてのサイエンス・ノンフィクション。ミクログリアは脳における、ニューロン以外の細胞であるグリア細胞の一種。その役割はいままであまり知られていなかったが、実は脳における免疫系の役割を果たしていることが分かってきた。ということは精神疾患として現れる、脳における様々な障害はミクログリアが関与している可能性が高い。本書はミクログリアの役割が発見される過程、ミクログリアが深く関わっている精神...

松木一永『お客様を幸せにする 行動経済学のアプローチ』

おそらく優に3冊分はあるのではと思うような、情報量の多い600ページ強の本。著者は認知心理学で博士号を取ったのち、ダン・アリエリーが創業したコンサルティング会社BEWorksに務める。この企業は行動経済学や認知心理学をビジネス課題に適用しようとするところであり、博報堂DYグループの傘下に入っている。本書では顧客行動に関する行動経済学、認知心理学の知見を数々に引きながら、多様な側面でいかに顧客行動を理解していく...

マリア・コニコヴァ『The Confidence Game』

これほど詐欺が盛んなのは、ある意味、 私たちが求めているからだ。 私たちは彼らの話を信じたいし、なにより「うますぎる話」 を信じたい。 詐欺とは、お金や愛ではない。 信念だ。 私たちは賢い投資家で、恋愛対象者を見る 目もあるし、すこぶる評判も良い。 つまり、 何か良いことが起こる人間だ。私たちが生きているのは不思議に満ちた世界で、不安と消極性が蔓延する世界ではない。 幸せを待っている者のところに幸せがやって...

中島亮太郎『ビジネスデザインのための行動経済学ノート』

行動経済学をヒントにして、ビジネスにおけるマーケティング施策などへどう応用できるかを書いている。60個のトピックに分かれ、一つ2~4ページほどで簡潔にまとめられている。行動経済学と名があるが、むしろ認知心理学的な、人間の情報処理におけるバイアスが多く扱われている。たとえば、顔のように見える模様に強く注意が向けられるというシミュラクラ現象は、明確に認知心理学の話であって行動経済学の話ではない(p.46-48)。様...

Moran Cerf、Manuel Garcia‐Garcia編『コンシューマーニューロサイエンス』

消費者行動の理解に神経科学的な知見を用いようとするConsumer Neuroscienceの教科書。学問的にしっかりしている重厚な一冊なので、読むのはなかなか骨が折れる。内容は、前半がだいたい消費者行動の理解に役立ちそうな神経科学の知見(脳の構造、感覚、注意、記憶、感情、意思決定、報酬系)で、後半がブランド認知、価格、ソーシャルマーケティング、マーケティング調査といった実際のマーケティング業務にどのように神経科学か...

マイケル・ポーラン『幻覚剤は役に立つのか』

自宅オフィスで初めて会ったとき、【心理学者のビル・】リチャーズは言った。「長い歴史の中で見てみれば、幻覚剤は少なくとも5,000年前からあり、使用が一般的になっては規制され、というサイクルを何度もくり返してきた。あれもそのサイクルだったんだ。だが、キノコは今だってそこらに生えているんだから、そのうちまた使われるようになる。私はそう願っているよ」(p.69)幻覚剤(LSDやサイロシビン)の歴史、1960年代の熱狂と禁...

横澤一彦編『認知科学講座4 心をとらえるフレームワークの展開』

近年の認知科学の新しい展開について。統合的認知、プロジェクション科学、予測的符号化、自由エネルギー原理、圏論的認知、記号創発システム、全脳アーキテクチャについて書かれている。特にプロジェクション科学、(内受容感覚に例を取る)予測的符号化、自由エネルギー原理については優良なサーベイ論文となっている。 統合的認知はほぼ共感覚についての研究のサーベイ。共感覚の個人差や文化差について書かれている。プロ...

リサ・バレット『バレット博士の脳科学教室 7½章』

なぜか日本ではあまり有名でないような、脳神経科学の読み物。現在の神経科学が捉えている脳や神経の話を、時に通説を批判しつつ、平易に面白く書いている。脳神経そのものの話から、神経網、身体との関わり、他者、社会と徐々に広くなっていくように章が書かれている。前半は神経科学そのものの話なのでかっちりしているが、後半はやや話も散漫になってきているような印象をもった。また極力、専門用語は避けているので、どうもふ...

乾敏郎『感情とはそもそも何なのか』

再読。能動的推論の仕組みを感情を中心に導入する。感情、知覚、運動が統一した枠組みで扱えることを示す。内受容感覚とそれを統合する島皮質が自己の状態をモニターする重要な機構であることをが強調される。精神疾患にみられる感情障害が、能動的推論の観点から、何の障害によって起こるのかが仮説的に述べられる。後半では能動的推論の理論化としての自由エネルギー原理を説明する。予測の事後確率推定をMAP推定で行うときの、...

ダニエル・カーネマン、オリヴィエ・シボニー、キャス・サンスティーン『NOISE 下』

多くの状況で、ノイズはあってはならない恥ずべきものである。現状ではみなノイズとともに生きているが、本来はそうあるべきではない。無制限の裁量の余地を与えたり、どうとでも解釈できる規範で済ましたりすることをやめ、ルールやそれに類する方法に切り替えることが望ましい。 シンプルな解決こそが正しい解決だと私たちは感じている。 ルールの導入が現実的でない場合や好ましくない場合であっても、ノイズを減らすために本書...

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プロフィール

坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)

Author:坂間 毅 (Sakama Tsuyoshi)
コンサルティングファームに所属。数学の哲学を専攻して研究者を目指し、20代のほとんどを大学院で長々と過ごす。しかし博士号は取らず進路変更。以降IT業界に住んでいる。

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