

キャッシュ・マネジメント・システムの仕組み上の内実と、実際の利用状況について。大阪ガスでBTMUと一緒にCMSを作った人が、その後、大学院で博士論文として提出したもののようだ。CMSの機能概要、エージェント理論や為替レートのトリレンマなど経済学や金融理論を取り入れた位置づけ、そして国内14社のアンケートとインタビューに基づいた利用実態の調査からなる。
主に国内CMSの運用を中心として、プーリング、長期資金運用、ネッティング、支払代行と回収代行について記す。最終章で海外を含めたGCMSの諸問題を扱う。企業での実際の運用にも詳しいため、例えばプーリングで実際のところ銀行よりどのくらい金利が有利になるのか(p.59-61)などの論点も扱われる。また法的問題にも多く目配せしており、印紙税の問題やプーリングで子会社の資金を吸い上げることの、株主利益毀損や両者を兼務する取締役の利益相反の問題(p.71-79)といった論点もある。
ネッティングについて決済日が同じものの相殺、仕訳上の相殺のほか、CMS口座統制によって債権債務の総額をネッティングする手法をネッティングの第三法とする。これは先行研究において論じられていないそう。一つのCMS口座にプーリングが行われていれば、ゼロバランスにより相殺され決済資金が不要になる(p.90f, 105-107)。単一の銀行の単一の本支店口座にCMS口座を持つ優位点を説く。
ほかにGCMSについて、資金移動の規制がある東南アジアではノーショナル・プーリングを有効な選択肢として検討すべきという論点(p.149-155)をメモする。
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